第43話 あの子はなに?
あの子に言われるまで気付かなかった。スピカの名前を一度も呼んでいなかったことに。
休憩を挟みつつも、丸一日を模擬戦に備えた練習に費やした。自室に戻ると吸い寄せられるようにベッドへと向かった。仰向けに寝転び、なにもない天井を見上げながら私は考えていた。
――スピカは私の友達?
セントラルへ編入してきた時、友達なんてつくるつもりは一切なかった。もちろん、学校生活を円滑にするうえで多少の人間関係の構築は必要。ただ、それ以上はいらない。そう考えていた……、いや、今でもそう考えている。
ここは名門魔法学校、厳しい競争を勝ち抜いた先に輝かしい魔法使いの未来が待っている。私はここで魔法を極め、必ずシャネイラ様から認められる魔法剣士になってみせる。
そのために必要なのは、目指すべき目標と競い合うライバルだ。スピカはライバルじゃない。あの子には悪いけれど、私と競い合うレベルにはない。
馴れ合いの人間関係なんて求めていない。今の居心地よさなんて求めたらいつか足元をすくわれる。理屈にならない不明瞭な存在はいつかきっと私の判断を狂わせる。足枷にある。
頭ではわかっているつもりだ。
だけど、スピカと一緒にいて安心してる私がいる。自分でも驚くほど口数が増えているのもわかる。あの子と一緒にいるのが楽しい。それにあの子は真っ直ぐ過ぎて危なっかしい。私が傍にいて支えてやらないと……。
いけない。この感情はもう判断が狂っている。
シャネイラ様に会いたい。それに先日会ったカレン・リオンハート様、臨時講師のアレンビー先生もすごい人だと思った。
私が尊敬する人たちに尋ねてみたい。友達は必要なのかって。もしも必要と言うなら、きれいごとを抜きにして、どうして必要なのか訊いてみたい。
そういえば、明日はスピカの先生に会える。一体どんな人なんだろう。あの子に魔法を教えた人なのだから魔法使いには違いないはず。
地方の魔法学校の教師? それとも魔法ギルドのマスター? 名前を聞きそびれたから全然わからない。明日のお楽しみかしら?
スピカはスイーツがどうとも言っていた。一体なんだろう、甘い焼き菓子とかかな?
いけないいけない……。疲れてなに考えてるかわからなくなってきた。明日もお休みといえども、朝の素振りはしっかりやらなくちゃ。こんな調子で起きられるかしら?
瞼が重たい。私、今目を開けてるのかな? 部屋が暗いせい? それとも目を瞑っているのかな?
明日も7時に起きて木剣の素振りをして……。スピカが出かけるのは何時なんだろう……? 聞くのを忘れてたわ。でも、大丈夫。そんなに朝早いわけない。
明日はスピカとお出掛け……、あの子は私の、友達……。
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