第8章 運命の交差点

第40話 スイーツ&スイート

 今日はセントラルに入学して初の休日です! 明日もお休みの予定になっています! そしてどちらの日もしっかり予定が入っています! スピカ・コン・トレイル、入学初週から学校生活を満喫してます、くふふ。


 今日と明日の予定はどちらも昨日の夜に決まりました。




◇◇◇




「……明日と明後日の休み、なにか予定ある?」


 夜に魔導書グリモワを見て勉強しているあたしにアトリアさんが声をかけてきました。


「明日はなにもありません! 明後日はお出掛けをします!」


「……夜なんだからもう少し小さな声で返事しなさい?」


 アトリアさんは呆れた表情で言いました。たしかにお隣にも聞こえてしまうかもしれませんね。あたしの声は普通の人の大きい声と同じくらいなので、意識的に声を落とさないといけません。


「……シャウラと模擬戦やるんでしょう? 明日、一緒に練習しない? 私は氷の魔法使うからシャウラと同じ系統なの。きっといい訓練になるわよ?」


「ありがとうございます! 明日なにしようか考えていたところでした!」


「……だから、静かにって。いいのよ、私も付き合ってくれる人探してたから。――けど、明後日は予定があるのね?」


「くふふ、そうなんです。実はですね……」




◇◇◇




 夕食を終えて寮の部屋に戻るときにウェズンさんに呼び止められました。


「スピカさん宛てにお手紙が届いてるの。だけど、差出人の名前が無くて……、心当たりあるかしら?」


 笑顔で首を傾げるウェズンさんからお手紙を受け取ります。たしかにあたしの名前は書いていますが、差出人のところは真っ白です。ですが、宛名の文字には見覚えがありました。それに封蝋には三日月の印が押されています。


「これはセンセからの手紙です! ありがとうございました!」




「センセからお手紙が届きまして、明後日、街で会う約束をしたのです!」


 手紙には、あたしの近況を尋ねる内容の文書と一緒に「魔法の写し紙」が入っていました。マジックアイテムの一種で、ここに返事を書くと対になっているもう1つの紙にその内容が記されます。きっと対の1枚はセンセが持っています。


「街でおいしいスイーツのお店を見つけたからそこで会って話しましょう、と書いてありました! 今からとても楽しみです!」


「……おいしいスイーツ? ……それは、よかったわね」


 あたしの気のせいか、アトリアさんは「スイーツ」の言葉にすごく反応したように思えました。


「よかったらアトリアさんも一緒にどうですか!?」


「……私はいいわよ。先生と会うんでしょう?」


「でも、センセの手紙にはお友達も一緒に――、って書いてありますよ?」


「……そうなの?」


「はい! お友達ができたら一緒にスイーツごちそうするから連れて来なさいって書いてあります!」


 アトリアさんは下を向いて3秒ほど黙り込みました。


「……ええ、付き合ってあげる」

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