第38話 ベラトリクスVS.アレンビー
アレンビーの模擬戦の相手はベラトリクスに決まった。公正なジャンケンを勝ち抜いて選ばれた彼だが、選ばれなかった学生たちからはヤジが飛ぶ。その内容は共通して、アレンビー先生に手を出したら許さない、だった。
「うっせえなぁ……、こんな美人の顔蹴ったりするもんかよ」
ベラトリクスの独り言と外野の声を聞いてアレンビーは怪訝な表情をする。
「ええと、ベラトリクスくんだっけ? あなた暴力でも振るうの?」
アレンビーに問われたベラトリクスは片手で頭を掻きながら笑顔で答える。
「魔法闘技ルールなんスよね? それなら手ェ出したりしませんよ? ただ、魔法使いは魔法だけで戦えって考えが嫌いなんス」
彼の返事を興味深そうに聞くアレンビー。
「ふぅん……、それはどうして?」
「
アレンビーはベラトリクスの話を聞いて不敵に笑ってみせた。今度は逆にベラトリクスの方が怪訝な顔をする。
「――いいわよ? この模擬戦に限っては、私の的を落とすためなら殴ろうが蹴ろうが石投げようが……、なにしてきたってかまわないわ?」
彼女の言葉を「挑発」と受け取ったのか、途端にベラトリクスの表情は険しくなった。
「……困っちまうな? 顔がいい女は大好きなんスけど、生意気な女は大嫌いなんスよ、オレ?」
「あら、挑発したつもりはないのよ? むしろあなたの考え方を褒めてあげたいくらい。だから、全力で来なさい、って言ってるのよ。私も手を抜かないから?」
アレンビーの言葉を聞いてベラトリクスは白い歯を見せて笑った。
「ありがとう、先生。前言撤回だ。あんたみたいな女は超好みだぜ!」
模擬戦とはいえ、形式は魔法闘技のルールにのっとって行われる。大きな菱形の闘技場、その東側にアレンビー、西側にベラトリクスが立つ。北と南の位置には審判としてエクレールとティラミスが立っていった。
2人の審判が闘技場の中心目掛けて発光する簡易魔法を放出する。それらがぶつかった瞬間が試合開始の合図となる。
開始の瞬間を今か今かと固唾を飲んで見守る学生たち。そのほとんどがアレンビーに注目している。
魔法闘技の公式戦で連戦連勝を続けるアレンビー、彼女の戦いを間近で見られる喜び。ただ、一方でベラトリクスに誰も注目していないわけではなかった。
ここにいる同学年の生徒たちはまだ少ない回数ながら、彼と実技の授業を共にしている。そして、入学2日目にあった進学組サイサリーとの模擬戦も目撃しているのだ。
彼は魔法の技量だけみても決して低くない。だが、それよりも己の肉体や環境すべてを武器にして戦う「実戦的」な動きには目を見張るものがあった。それを良しとするか否かは別として――、全力の彼は非常に手強い男なのだ。
その彼が、魔法闘技のスター選手相手にどういった戦いをみせるのか、注目されないはずがなかった。
「改めて、ベラトリクス・ヌーエンだ! 本気でいくぜ、先生っ!」
「アレンビー・ラドクリフよ、来なさい」
一方は戦いの覇気を込めて、もう一方は妖艶な雰囲気をまとい名乗りを上げた。
ベラトリクスが選ばれた際のヤジから一変、場は静寂が支配していた。そして、北と南に立つ2人の教員から魔法の光が放たれる。闘技場の中央でそれらはぶつかり、一層強い光を放った。
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