第7章 臨時講師の授業

第34話 スター

 セントラルに入学して5日が経ちました! 魔法の講義や演習をたくさん受けて、これまでにない濃密な期間を過ごしている気がします。座学の内容は毎日部屋に戻ってからしっかり復習しているので頭に入っています。


 実技は、周りの皆さんのレベルがとても高くて大変ですが、なんとか遅れないようにがんばっています。

 アトリアさんは魔法の詠唱がとても早く、威力も強力で、先生に褒められていました。あたしまでなんだか嬉しくなりますね!


 ですが、実技を伴う授業でアトリアさん以上に目立っている方もいます。それは3回生女子寮の寮長、ウェズンさんです。魔法の威力もさることながら、詠唱速度が桁違いです。瞬きしている間に魔法を放ったりしています。一体どうなっているんでしょうね?



「……ウェズン寮長は同学年の中でも明らかに抜きん出ている。あんな人がいるなんて――、セントラルのすごさを再認識させられた」



 今は、アトリアさんと朝食をとりながらお話をしています。ウェズンさんのすごさはアトリアさんも感じているようでした。

 あたしも共感してみせると、「あなたはまず自分の腕をもっと磨きなさい」と言われてしまいました。ですが、彼女の言うことはもっともです。あたしもみんなから「すごい」と言われるようがんばらないといけませんね!


「……なんだか今日の食堂、いつもより騒がしくない? 私の気のせいかしら?」


 アトリアさんは周囲に目をやった後、そう呟きました。言われてみればなんだか騒がしい気がします。朝食のメニューは昨日と大差ないはずなのですが……。



「よーう! スピカ! アトリア! 今日の演習の噂聞いたか!?」



 元気な声で話しかけてきたのはゼフィラさんです。とても顔が広い方のようで、いろんな人と話しているのを見かけます。あたしもこんなふうになりたいですね!


「……おはよう、ゼフィラ。やっと私の名前呼んだわね? ところでってなに?」


「ふふん、まだ知らなかったのか? 聞いて驚くなよ?」


 ゼフィラさんは腕組みをしてもったいぶった言い方をしています。一体どんなびっくりする話題をもってきてくれたのでしょうか。期待がどんどん膨らんでいきます。


「……早く言いなさい。別にあなたに関わる話じゃないんでしょう?」


「アトリアー、つまらないこと言うなよ? ちょっとはスピカを見習えって。ほら、こんなに目を輝かせてよ? こういう反応がほしいんだよ、オレは?」


「……知らないわよ。――で、なに?」


 アトリアさんはため息をついた後に朝食の残りのスープを飲んでいます。目の前のゼフィラさんはお手上げの仕草をしていました。


「今日の演習さ、臨時の講師が来てくれるらしいんだけど――、それが誰なのかって話だよ!」


「だっ……誰なんですか!?」

「……知ってるから話しに来たんでしょう? もったいぶってないでさっさと言いなさい」



「なんとあの! アレンビー・ラドクリフ先輩が講師をやってくれるって噂だぜ!? どうだ! 驚いたか!?」



 アレンビー先輩……? 有名な方なのでしょうか?


 「先輩」なのだから、きっとセントラルの卒業生なのだと思います。残念ながら、あたしの頭にはその方の名前は入っておりません。どんな人なのか尋ねてみようと、あたしはアトリアさんの方に目をやりました。


 すると……、いつもクールで表情をあまり変えないアトリアさんが放心したような顔になっています。


「……アレンビー・ラドクリフって、あの『魔法闘技』のアレンビー?」

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