第19話 スピカ始動!
「サイサリーとゼフィラ……、3回生の中でもかなり優秀な方だったわよね?」
研究棟から模擬戦を見ていた教授たちは、今の2試合について言葉を交わしていた。
「上位層の学生たちではありますね。ただ、今の結果を見ると実戦レベルではまだまだといったところでしょうか?」
「編入生の中でもアトリアとベラトリクスは超・実戦型の魔法使いだ。ルールに制約を設けなかった時点で、進学組でもまともにやりあえる者は限られているだろう」
アフォガードにとって、ここまでの結果は予想できるものだった。しかし、最後に残った組み合わせだけは勝敗の行方を読めないでいた。
「進学組の最後は、シャウラ・ステイメン……、対する相手はスピカ・コン・トレイルでしょうか?」
「シャウラちゃんはたしか前の2人より成績も上で、案外実戦的にも動けるタイプだったわよね」
「ふむ……、一方のスピカは――」
◇◇◇
第2演習場の中央で向き合う2人。笑顔のスピカと不機嫌そうなシャウラ。スピカはこの模擬戦が始まってから終始笑顔でいる。人の魔法を見るのも、自分がその場に立つのも楽しくて仕方ないといった様子だ。
対してシャウラは、前の2人が続けて敗退している。模擬戦を仕掛けた側としてはあまりに不甲斐ない結果で面目が立たないようだった。
「スピカ・コン・トレイルです! よろしくお願いしますっ!」
「ふん、シャウラ・ステイメンよ。格の違いを見せてあげるわ」
両者は背を向けて歩き出す。適度な距離が空いたところでウェズンは試合開始の合図をするつもりでいた。
手足を大きく上げて行進するように歩くスピカの姿を見たウェズンは、いつも笑顔の口元がさらに緩みそうになっていた。
「はい。それでは、試合開始ー」
またしても、その場の2人しか聞こえないくらいの声量で戦いの火ぶたは切って落とされた。
シャウラは氷の呪文を得意としていた。まずはお手並み拝見とばかりに下級魔法を詠唱し、スピカに向けて発射する。
これに対して避けるのか、防ぐのか。避けるならどの方向へ、防ぐのなら結界をはるのか、魔法で相殺してくるのか……、彼女はスピカの動きを注意深く観察していた。
しかし……。
「えっ?」
スピカは避けるも防ぐもしなかった。避けるような素振りこそみせたが、立ち位置は結局元の場所のまま。
シャウラの魔法、「アイシクルランス」はスピカの目の前の地面に氷樹となって突き刺さっていた。
「あっ…、危なかったです!」
驚いた顔のスピカ。彼女の表情から、魔法の着弾点を予測して避けなかったのではなく、単に回避の動きが間に合わなかったのだと想像できた。
『この距離で狙いを外すなんて!? 安易にいき過ぎたのかしら……』
スピカとシャウラの様子を遠くから見守るアトリア。そして、
「左右どっちに避けるか一瞬迷った感じだな? 相手が外してくれて助かったぜ」
「……そうね」
アトリアは心のなかでスピカに期待していた。10年以上も朝の修行を続けている同期の魔法使い。相部屋となり、これからきっと行動を共にするのも多いだろう、と。彼女は一体どんな能力を秘めた魔法使いなのか……。
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