第12話 変なの
セントラルでは4年間、共通して1冊の
あたしとアトリアさんは、早めに講座の行われる教室へと入りました。彼女が朝のゴミ拾いの際に、場所をチェックしてくれていたので迷わずここへ辿り着けました。この抜かりのない動き、さすがの一言です!
席は、教壇から階段を上っていくようにたくさんありましたが、アトリアさんは迷わず一番前の席に座りました。あたしもその左隣りに腰を下ろします。
「……目立つところの方が変なのに絡まれる心配も少ないから」
彼女は言い訳するようにそう言って席に着きましたが、あたしは先生の話が一番よく聞こえるこの席が最高の場所だと思いました。
まだ人が
「よう、アトリアとスピカだっけか? おはようさん」
背が高くて、真っ黒でトゲトゲした頭の男の人。この人は同じ編入生のベラトリクスさん……、のはずです。
あたしが大きな声で挨拶をすると、アトリアさんも小さな声でそれに続きました。
「昨日はろくに話せなくて悪かったな、こうも女が多いと思ってなくてよ?」
彼は片手で頭をがりがりと掻きながらそう言いました。そういえば、以前に
女の子が多くて緊張してしまったのでしょうか。なんだかかわいらしいですね!
「……精霊とのコンタクトは、女性の感受性との相性がいいらしいわよ? きっとそのせいね」
アトリアさんが説明をしてくれました。
ベラトリクスさんは、あたしたちの正面に立ったまま腰を少し落として顔をじっと見てきます。席はたくさん空いているので早く座ったらいいと思うのですが。
「うーん……、57か8」
「はっ?」
あたしの口から変な声がもれてしまいました。彼がなにか数字を言っているのですが、意味がまったくわからなかったからです。
ですが、彼はあたしの反応を気にも留めずに、今度はアトリアさんの顔をじっと見つめています。彼女はとてもうっとおしそうにして、横目でそれを訴えてきました。
「うん! こっちは64ってとこだな、かなりイイ線いってるぞ!」
「あの……、今のは一体なんの点数ですか?」
あたしが疑問を投げかけると、彼は姿勢を戻して腕組みをしてから言いました。
「なにって……、決まってるだろ? 顔面偏差値だ」
「はっ?」
「オレ様基準で50超えた女には優しくするからな! アトリアなんか64だ! 超高評価だぞ! 喜べ!」
ベラトリクスさんは堂々とそんなことを言いながらアトリアさんの右隣りの席に座ろうとしています。すると、彼女は仮面のように表情ひとつ変えずにこう言い放ちました。
「……座るな。キモい、しね」
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