第7話:王位の駆け引き・名誉と野望の闘い

「御待ちになって下さい、父王陛下。

 家臣の名誉より、私の名誉の方が先ではありませんか?

 それとも父王陛下は、トライガの方が私よりも可愛いから、私の名誉など踏み躙っても構わないと言われるのですか?」


「そんな事はない、そんな事はないぞ、ヴェロニカ」


 流石ヴェロニカ王女殿下ですね。

 登場する場面を待ち受けておられたのですね。

 あわよくば、私に王太子を殺させ、自分が王位を継承する心算だったのでしょう。


 そのために、王太子が私を貶めるのを、今日まで見逃し続けたのでしょう。

 私の怒りが限界に達し、ログレス公爵が同席しない今日まで待たれた。


 ヴェロニカ王女殿下の誤算は、国王の登場ですね。

 だからここで自分が登場して、最低でも王太子を私に殺させる。

 あわよくば、私に国王まで私に殺させたいのでしょう。


 ですが、そこまで持ち込めるのでしょうか?

 できれば、王太子も王も王女も殺してしまいたいのです!


「では、どうやって私の名誉を回復してくださるの?

 弟にここまで馬鹿にされては、とても泣き寝入りする気になれませんわ!

 幸い愚かなトライガが、レティシアに決闘を申し込んでくれました。

 正々堂々決闘で決着をつけてくだされば、私も納得できますわ。

 承知してくださいますわよね、父王陛下!」


「何を言い出すのだ、ヴェロニカ!

 決闘などさせたら、トライガが殺されてしまうではないか!

 お前は弟が殺されてもいいと言うのか?!

 いや、王太子が殺されたら、国が乱れる事になるのだぞ!」


「何を申されておられるのですか、父王陛下。

 私がいるではありませんか。

 トライガが名誉の決闘で死んでも、私が王太女となれば済む事です。

 そうすれば、私にもレティシアにもログレス公爵にも、名誉回復のために余分な金銭も領地も与えずにすみます。

 これほどいい解決方法はありません。

 愚かなトライガが引き起こした大問題ですが、トライガが決闘で死ねば、全て丸く納まります。

 いえ、それどころか、暗愚なトライガを次代の国王に戴冠させずにすみます。

 全て万々歳ではありませんか!」


 国王はもう酸欠の金魚のように、パクパクと口を開け閉めしているだけです。


 それも仕方ありませんね、娘のヴェロニカが、王位を狙って弟のトライガを殺す機会をうかがっていたと、今初めて知ったのですから。

 

 ヴェロニカ王女殿下は長年努力を重ねてこられました。

 性格はとてもとても悪いですが、その努力は本物です。


 女という圧倒的な不利を跳ね飛ばして後継者に指名されるべく、トライガなど足元にも及ばない能力を示し続けられました。


 ですが、それでも、後継者に指名されたのは、愚かなトライガでした。

 ヴェロニカ王女殿下は、絶望されると同時に、国王にも見切りをつけられたのでしょう。


 さて、国王は正し判断が下せるのでしょうか?

 間違った判断を下したりすると、実の娘に弑逆されてしまいますよ。

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