第4話:屈辱と嘲笑・高貴なる愚王太子の終焉

「ば、ば、ば、ばか、ばかな、な、なん、なんで。

 よ、よ、よは、余は、こうき、なる、もの、ぞ」


「ええ、ええ、ええ、よぉおぅおく、よおぉぅく、存じてりますよ。

 この国一番の高貴なる血の王太子殿下ぁ。

 その高貴な、高貴なぁ、王太子殿下なら、決闘の作法くらい御存知ですね。

 ここまでやって、決闘の申し込みではなかったなんて、今さら言っても通じないのは、御存知ですよね」


「ぶ、ぶ、ぶ、ぶれ、ぶえい、もの」


 本当に情けない事です。

 このような根性なしの臆病者が、この国の次期国王だと言うのです。

 側近達も阿諛追従の佞臣ばかり。


 もうこの国も終わりですね。

 ですが、私が王太子を殺せば、もしかしたら、国運が持ち直すかもしれません。


 ヴェロニカ王女の事などどうでもいいですが、他国に一緒について行くのなら、この国が滅ぶのは後ろ盾をなくすのと同じです。


「ウギャァアァアァアァ、や、や、やめ、やめ、ろ!

 よ、よ、よは、お、お、おう、たい、し」


「さっきから言っているだろう。

 知っているよ、よおおおく、知っているよ

 だから今日まで我慢してやっていた。

 だがもう我慢の限界だ、決闘の申し込みを受けてやる。

 だが決闘だとはいっても、楽に死ねるとは思うなよ」


 別に怒りに震えて言葉が乱暴になっている訳ではありません。

 王太子を恐怖させるために、わざと乱暴な言葉を使っているのです。


 それに、姫騎士の役目柄、多少は乱暴な言葉を使えないと、酔って礼儀を失った色魔貴族を撃退出来ませんから。


「ひぃぃぃぃ!」


 私は王太子を脅かすために剣を抜きました。

 本質は臆病な王太子です、恐怖のあまり簡単に失禁しました。


 独特の臭気が会場中に広がります。

 もうちょっと脅かしてさしあげましょう。

 この程度の醜態では、伝説の愚王太子にはならないからね。


「情けないですね、あれほど高貴だと自慢しておいて、この程度で失禁ですか?

 十二三の騎士見習いでも、ここまで臆病ではありませんよ。

 では、そろそろ死んでいただきましょうか」


「ウギャァアァアァアァ」


 やりました、脱糞させることに成功しました。

 間違えようのない独特の臭気が会場中に広がりました。


「はっははははは、脱糞ですかぁ?!

 この国で一番高貴だと、あれほど自慢していた王太子殿下ともあろう御方が、事もあろうに女との決闘で恐怖して、脱糞したのですかぁ!?

 なっさけないですねぇ!」


「みんなもそう思うだろう、思うよな?

 だったら笑え、笑わんか!」


「は、は、は、はっははははは!」


 私が某伯爵のネクタイを剣で斬り、某子爵のカツラを剣で跳ね飛ばすと、会場中が王太子を嘲笑する音に包まれた、その直後。


「これはいったい何事だ!」

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