第9話 ミュラ王女との再会

ミュラ王女に無事を伝える為に、ファンドラに転移したレイとローズマリー。転移魔法でMPを大量に使った事で宿屋で休んでいたが、一晩眠ると体調はすっかりよくなっていた。


「おはようマリー。昨日は迷惑かけたね。」


「全然大丈夫よ。むしろレイのおかげで一瞬でファンドラまで来れたんだもの。感謝しかないわよ。それより体調はどう?」


「ああ、一晩寝たらすっかりよくなったよ。」


「ならさっそくミュラの所に行くの?」


「そうだな。ミストとも話したが姿を隠す魔法があるみたいだからそれを使って王城に入ろうと思う。午前中なら部屋にいるはずだろ?」


「そうね。ミュラも心配してるだろうから早くレイの顔を見せてあげた方が良いわ。その姿を隠す魔法は私にもかけてくれるんでしょ。」


「ああ。」


「なら早速行動開始しましょ。」


「そうだな。ボルテックス達の事を調べてから城に入ろうかと思ったが、俺達ってここで聞き込みできるような感じじゃないもんな。」


「ええ。私なんかここを出て大聖堂にいるはずだしね。」


ボルテックスが城にいない時を狙って忍び込む予定にしていたが、調べる為には街を歩いて情報を集めないといけない。だが、レイやローズマリーはこの町ではとても有名だ。レイは魔王を倒す為に死んでしまった者として、ローズマリーは魔王を倒した勇者パーティーの一員として。


姿を隠す魔法を使ったレイとローズマリーは、慎重に城の中へと入って行く。姿を隠すと言ってもそこにちゃんと存在はしているので、触れる事はできる。堂々と城の中を歩くのではなく、ある程度は見つからないように行動した。


城の中には何度も来た事があり、ミュラ王女の部屋の場所も把握していたので、部屋へはスムーズに辿り着く事ができた。部屋の中にミュラ王女以外の者がいたら計画が台無しになるので、まずはローズマリーが恐る恐る部屋の中に入った。


部屋に入ると、目当てのミュラ王女は一人で部屋の中にいた。だが、その表情は優れない。早くレイに会わせてあげたいと思ったマリーは魔法を解除し、ミュラ王女に話掛けた。


「ミュラ。」


「!?マリー!どうしてここに?」


「しっ!!落ち着いて。今は部屋で一人なの?」


ミュラ王女が驚いて大きな声を出したので、マリーが静かにするように言った。


「ミュラ王女!!何かありましたか?」


ミュラ王女の声を聞いた騎士がドアをノックし、ミュラ王女に問いかける。


「なんでもありませんわ。大丈夫ですので。」


騎士にそう言い、ミュラはマリーへと話しかける。


「マリー。あなた大聖堂に行ったんじゃなかったの?」


「ええ。行ったわ。それで戻ってきたのよ。もちろんレイも一緒よ。」


「えっ??レイもいるんですか?どこに?」


「落ち着いて。ここには誰にもバレない様に来てるの。レイは姿を隠して扉の前で待ってるわ。」


ミュラ王女は、その言葉を聞き部屋のドアを開けた。姿が見えないのでレイがいるかどうかはわからなかったが、ドアを閉めて振り返るとそこには・・・


「ミュラ王女。お久しぶりです。」


「ああレイ。レイなのね。無事でよかった。本当に生きてた。よかった・・・」


「ああ。色々会ったけどちゃんと生きてるよ。とりあえず話をしたいんだ。大丈夫かな?」


「ええ。この部屋には誰も入ってきません。それにしばらくは私も予定がないので大丈夫です。そうですね。こちらも色々問題が起きているのでこのタイミングでレイに会えたのはよかったです。」


「問題?何かあったの?」


「ええ。実は・・・」


ミュラ王女の話は衝撃的だった。なんと、魔王と名乗る者が新たに現れたのだ。ミストを倒した者達を見る為にファンドラの城に来たみたいで、ボルテックスの姿を確認するとすぐに消えてしまったようだ。


(まじか・・・。ミストには聞いてたけど本当に他にも魔王がいたんだな。)


「ミスト?心当たりはあるか?」


「そうじゃな。妾の他には3人の魔王がいる。これは妾の予想にはなるが、多分アルフェンじゃと思う。妾の土地を巡って他の魔王が争う話はしたと思うが、アルフェンよりも他の2人の方が格段に強いのじゃ。じゃからアルフェンは妾の土地を諦めてこの大陸を狙っているのではないだろうか?」


「なるほどな。」


「ミュラ王女。その魔王は名前とかは名乗って行ったんです?」


「ええ。アルフェンと言ってました。」


(ミストの言ってた魔王と一致したな。だがどうする?今の俺じゃ魔王相手なら秒殺でやられるだろう。かと言って生きてる事を公表してボルテックス達と再度パーティを組むつもりはない。どうしたものか・・・)


「ミュラ?その魔王はすぐに消えたのよね?」


「ええ。」


「レイ。ミュラ。これはチャンスだわ。」


「「チャンス?」」


「ええ。新たな魔王が現れたって事は、ボルテックス達は魔王を討伐しに行かないといけなくなったって事よ。ボルテックス達はここに居座れないわ。」


(たしかにマリーの言う事も一理あるな。ファンドラを離れてくれるならミュラ王女がボルテックスにちょっかいかけられる事はなくなる。ボルテックス達が魔王を倒せるとは思わないが、時間稼ぎにはなるだろう。いやでも待てよ。俺はいいけどマリーはボルテックス達に一緒に行かないといけないんじゃないか?)


「マリー。お前はボルテックス達と魔王討伐に行かないといけないんじゃないのか?」


「えっ?いやよ。私はボルテックス達とパーティを組むつもりはないわ。レイを殺そうとしたパーティになんか戻らないわよ。今は魔王討伐の報告をするために大聖堂に行ってる事になってるけど、新たな魔王が現れたなら、力不足を理由にパーティへの同行は拒否するわ。」


(なるほど。それなら大丈夫か。)


「え~っとレイは魔王討伐には行かないの?」


「ミュラ王女。今の俺はボルテックス達に力を奪われてレベルも20だし、聖獣もフェニク以外は封印されたままなんだ。今の俺じゃ魔王を倒せない。」


「そんな・・・」


「ミュラ王女安心してくれ。俺はすぐに強くなる。そして必ず魔王を倒して見せる。」


「レイ・・・」


「そうね。私もついてるしね。そうと決まれば作戦会議よ。どうやってボルテックス達をファンドラから追い出して、私達はどうやって魔王を倒す為に強くなるかのね。」


そうして、レイ、ローズマリー、ミュラ、フェニク、ミストは今後の事を話し合うのだった。

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