第8話 いざファンドラへ

「転移魔法!?」


「えっ?どうしたの急に?」


驚きのあまり声に出ていたようで、マリーに驚かれた。


「いや、ファンドラに行く手段なんだけど、転移魔法でいけるみたいなんだ。」


「えっ・・・」


「ミスト!本当に転移魔法が使えるんだろうな?これで使えなかったらすごく恥ずかしいぞ。」


「もちろん大丈夫じゃ。フェニクと契約して、ステータスも上がってるレイなら問題ないじゃろ。・・・多分。」


多分って言ってるし。それに転移魔法って使い手がいなくて失伝した魔法だよ?大丈夫なの?それに普通転移魔法って行った事のある場所しか行けないんじゃないの?ミストって魔王城から出た事ないよね?本当に大丈夫なの?俺もうマリーに転移魔法でファンドラに行けるって言っちゃったよ?今さらやっぱ無理でしたなんて言えないよ?


落ち着け。落ち着け俺。ミストは全ての魔法が使えるって言ってた。一つずつ疑問を解消していこう。


「ミスト。転移魔法って行った事のある場所にしかいけないんじゃないのか?」


「もちろん。その通りじゃ。」


ほらやっぱり。じゃあいけないじゃん。お前魔王城から出た事ないって言ってたじゃん!


「なら無理じゃないか。」


「いやいや何を言ってるんじゃ。魔法を使うのはレイ。お主ではないか。お主はファンドラには行った事があるじゃろ?」


「あっ!?」


なるほど。そういう理屈か。たしかに魔法を使うのはミストじゃなくて俺だ。そして俺はファンドラだけじゃなく、各大陸を旅してたから行った事のない場所の方が少ない。


えっ?今の俺って一瞬でどこにでもいけるの?チートじゃん!


「なるほど。なら今の俺は転移魔法で世界中のどこにでも行けるんだな?」


「いや、どこにでもは無理じゃぞ。」


えっ?いやいや、行った事のある場所なら転移魔法で行けるって今言ったばっかりじゃん!


「ん?行った事ある場所なら転移魔法でいけるんだよな?」


「もちろんじゃ。ただ、MPが足りなければ魔法は発動せんぞ。」


「MP・・・」


「うむ。距離によって、消費されるMPが変わるのじゃ。遠い場所ならそれに比例して、求められるMPも多くなる。当然じゃろ?」


「な、なるほど。ならファンドラへも行けるかわからないんじゃ・・・」


「じゃから多分と言ったのじゃ。ここが北の大陸で、ファンドラは西の大陸なんじゃろ?隣の大陸なら行けるのでは?と思ったんじゃ。」


「ノーーー。」


なるほど。そう言う事か。謎が全て解けたよ。納得だ。


「レイ?」


やべっ。マリーの事忘れてた。ミストの事は知ってても目の前で声も出さずに驚いたり、項垂れたりしたら驚くよな。


「悪いマリー。ミストと色々話してた。」


「ええ。それは大丈夫よ。それで?ファンドラへは転移魔法で移動できるの?」


「う〜ん・・・多分。」


俺は先程のミストとのやり取りをマリーに説明した。


「それなら移動はレイの転移魔法で決まりね。」


「いや、まだファンドラに行けるって決まった訳じゃないぞ。」


「行けなくても構わないわ。近くの村でも、西大陸の港町でも。普通の手段より早く着くのは間違いないもの。」


たしかに。言われてみればそうか。この世界は移動は海なら船、陸なら馬車か徒歩、もしくは走りだ。ワープみたいな方法が使えるだけでもヤバすぎだな。


てか普通に考えて、船と場所しか移動手段がないってこのゲームやばくないか?プレイしてた時はなんとも思わなかったけどリアルになるとキツすぎるだろ?


移動をマックスにしたら大陸移動なんか20秒ぐらいでできたから苦労もなかったけど、リアルなら、移動速度なんて変更できない。やばい。転移魔法なかったらこの世界、かなり苦労しそうだ。


「たしかに。なら早速、転移魔法使ってみるか?」


「待って!そんなすぐに行けると思ってなかったから準備が必要だわ。今回はボルテックス達に気づかれずにミュラに会わなきゃいけないもの。」


「そうだな。」


まず、転移魔法でファンドラに行き、ボルテックス達に見つからないようにミュラ王女と合流する。ボルテックス達は常に城にはいないだろうから、その時を狙う。もしくは、ミュラ王女が城から出てるタイミングで。いやミュラ王女は城からは出ないか。


うまく城に侵入できるかどうかが鍵だな。まあミストの魔法に頼ればなんとかなるか。


「準備して夕方に出発しましょ。暗くなる前なら人も少ないはず。丁度いいでしょ。」


「だな。わかった。」


⭐︎⭐︎⭐︎


俺とマリーは身を隠すローブを身につけてファンドラの宿屋に来ていた。ちなみにフェニクはマリーのバッグの中だ。


結論から言うと、転移魔法は無事に発動した。ただし、ミストの言う通りMPがギリギリ足りた状況だった。


ゲームではMPがなくなっても魔法が使えないだけで他には全く影響がなかったが、リアルではMPがなくなると気絶するらしい。


ギリギリ1桁残ったので気絶する事は無かったが、動けないぐらいフラフラになってしまった。


マリーが転移する時間を夕方にしてくれて助かった。俺はマリーの肩を借りて宿屋に向かったのだった。


宿屋に着いた俺は、食事も取らずにそのままベッドにダイビングして眠りについたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る