第5話 フランダール大聖堂

はじまりの街アサガオを出て10日、レイは目的地の大聖堂にたどり着いた。


「大きな所じゃな。」


「ああ。この大陸で一番大きな所だからな。それよりもとりあえず宿屋を取ってギルドで情報収集しようか。魔王討伐の事はもうこっちにも伝わってるだろうからその辺の事と、ボルテックス達の情報だな。それと・・・!!!」


「どうしたのじゃ?」


「いま、なんとなくだけどフェニクの気配がした・・・」


「フェニク?お主の聖獣じゃな。という事はここにいるのか?」


どうしてフランダールに・・・もしかしてボルテックス達がいるのか?ここで見つかるのはまずい。きっと俺の存在が知られれば即座に消されるだろう。ちょっと慎重にいかないとな。


「わからない。もしかするとボルテックス、マジカルシュート、ガウラスの内の誰かが来てるのかもしれない。それに気配がしたけど一瞬だけですぐにわからなくなった。」


「ならお主の言うようにギルドで情報収集と行こうかのぉ。」


「そうだな。髪の色が違うとは言え俺の事知ってる人がいるかもしれない。ローブで顔を隠してれば大丈夫だとは思うけど、周りからみたら不審だ。気を付けよう。」


フェニク・・・ここにいるのか・・・


ギルドの中にある食堂で一人食事をしながら周りの冒険者達の話に耳を傾けるレイ。


そう言えばギルドで絡まれるのって異世界のテンプレだよな。チートキャラなら何言ってんだって返り討ちにするんだろうけど、俺って魔法が使えるだけでステータスが高い訳でもないもんな~・・・ふ~。絡まれないように隅で大人しくしてよ。


「おい聞いたか。魔王討伐の話?」


「聞いた聞いた。さすが勇者だよな~。なんでも仲間の一人が死んだらしいけど、最後は勇者の一撃で魔王が消滅したんだろ?」


「ああ。聖女様は城で待機してたみたいだけど、大聖堂出身の聖女様のパーティが魔王を倒すなんて俺達も鼻が高いよな。」


「いやいやお前は何も関係ないだろ。」


「何言ってんだよ。勝利の報告で聖女様が来てただろ?その時俺と目が合ったんだよ。あれはまちがいない。俺と聖女様は恋人・・・まではいかないけど友人みたいなもんだぜ。」


「そりゃ絶対気のせいだろ!!」



「レイよ。どうやら聖女が来ているみたいじゃな。」


「ああ。マリーはこの大聖堂出身だからな。勝利の報告でここに来てるのは不自然じゃない。だけど問題は聖女以外に誰が来てるかだ。話の内容じゃ俺は魔王との闘いで死んだ事になってる。マリーは城で待機してたから詳細は知らない。」


「そもそもその聖女とは会って大丈夫なのか?」


「ああ。マリーは信用できる。ボルテックス達とは違うさ。マリーが来てるならどうにかアイツとだけ会いたい。多分フェニクも一緒にいるはずだ。」


「どうするのじゃ?大聖堂に行くのか?」


「いや。大聖堂で面会するのは避けよう。とりあえずマリーの姿を確認したい。何か良い魔法は無いか?」


「さらっと難しい事をいいよるのぉ。まあ無い事もないが・・・」


「本当か?」


「うむ。光魔法を使って周りから姿が見えなくなる魔法がある。ミラージュというのじゃが。」


「なんか魔王が光魔法って変な感じだな。」


「それは妾も思っておった。じゃが妾は魔王。全ての魔法が使えるのじゃ。」


レイは、ミラージュの魔法を使い、大聖堂へと向かった。大聖堂には多くの司祭達や訪れる客がいた。


「せっかく聖女様が来てるっていうから来てみたのに、運が悪いな。」


「そういうなよ。なんでもワイバーンが紅葉山で発見されたから討伐に向かったって話だぞ。」


「聖女様ならワイバーンぐらい楽勝だな。」


「そうそう。今日は運が悪かったけど、明日はいるだろうしな。もちろん明日も来るだろ?」


「もちろん。」


どうやらマリーはいないみたいだ。それにしてもワイバーンか・・・。まあ1体ぐらいなら楽勝だろうけど、紅葉山にワイバーン??珍しいな。


「明日にはここにいるみたいじゃな。」


「ああ。今日は大人しくギルドで適当な依頼でも受けて、明日又来るか。」


大聖堂を後にして、簡単な依頼を受けようとギルドに入ろうとすると、レイよりも一瞬早くギルドの入り口のドアが開いて中に入る者がいた。


「誰か!!大変だ。聖女様が!」


勢いよく開いたドアと大声で叫ぶ冒険者の方に一斉に視線が集まる。


「どうしたんだ!?」


「紅葉山に出たワイバーンの討伐に聖女様がむかったんだが、先走った冒険者がいてヤバいんだ。今は聖女様の防御魔法でなんとかなってるが、ワイバーンが集まってきている。このままじゃ聖女様がヤバいんだ。」


「レイ?」


「ああ。」


やっぱりマリーしか来てないのか?ボルテックス達ならワイバーンぐらい楽勝だろうに・・・それにしてもワイバーンの群れか・・・1体だけならマリーだけでもどうにかなるだろうが、冒険者を守りながら複数の相手はきつい。


「ワイバーンは今のお主では荷が重いぞ?」


「わかってる。だけどマリーを見捨てる訳にはいかない。ミスト!協力してくれ。」


「しょうがないのう。妾にまかせておけ。」


マリー。無事でいてくれ!!


「レイよ。急ぎ出てきて大丈夫なのか?」


「もちろんだ。紅葉山の場所はわかる。急ぐぞ。」


レイはギルドを出て、紅葉山へと向かったのだった。



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