アオくん

 僕は汐の家に向かうところだった。左手に花火が入っているビニール袋を持ち、

住宅街を歩く。


「これだけあれば、足りるかな……」


 僕はビニール袋に入っている花火を見ながらそう呟く。


「おぉ、夏弥。久しぶりだな」


 ふと僕の後ろから声がした。振り向くと、そこには––––


「よう、夏弥! 久しぶりだな!」


 僕の面倒をよく見てくれるお兄さんがいた。僕は、アオくんと呼んでいるが

本当の名前はあおいという。昔からよく僕と遊んでくれている面倒見の

良いお兄さんだ。今は大学生だ。


「あっ、アオくんだ! 久しぶり!」


 僕はアオくんを見つけるなり、アオくんに駆け寄った。


「おっと。ははっ、夏弥はいつでも元気だな」


 アオくんは苦笑しながら僕に言った。

 いつでも、とは言っても、この笑顔はアオくんにしか見せてないと僕は思っている。


「夏弥って、これからどこか行くのか?」


 アオくんが僕に聞いた。


「花火持ってるし、これから友達と花火でもやるのか?」

「うん。みんなで花火をやるんだ」


 アオくんが僕の左手に持っているビニール袋を見ながら聞いてきた。


「そうか。まぁ、楽しんでこいよ。ごめんな、友達の家に行くのを邪魔して」


 アオくんが申し訳なさそうに僕に謝ってきた。


「全然大丈夫! むしろ、アオくんに会えて嬉しいよ」


 僕はアオくんに言った。


「じゃ、またねアオくん。大学の課題も頑張ってね」

「それは、お互い様だろ。夏弥も、課題頑張れよ!」


 アオくんから激励を貰ってしまった。アオくんから激励を貰ってしまったのなら

僕も頑張らないとな。僕はそう思いながら、再び汐の家に向かった。


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