セミの鳴き声がうるさい!
––––ミーンミーンミーン……
ふと、セミの鳴き声で目が覚めた。セミの鳴き声で起こされるとは……。
セミの鳴き声が僕にとっての目覚まし時計ってことか……。まぁ、悪くはないけど。
スマホを見ると午前十時四十五分だった。やばい、結構寝ちゃったな。
普段の僕なら大体九時半くらいに起きるのに、夏休みに入ったからか、生活がたるんだのかな。しかも、まだ三日目なのに。これじゃ折角の夏休みが有意義に過ごせないな。
僕はそう思い、急いで朝ご飯の用意をした。
朝ごはんは、適当に、昨日の余りもののおかずと、冷凍してある白米を電子レンジで解凍しよう。味噌汁はインスタントでいいかな。
僕は冷蔵庫から、タッパーに入っているおかずを取り出し、お皿に適当に盛りつけた。ラップに包んである白米を出して、お茶碗に入れ、味噌汁は粉末をお湯で溶かしたものをお椀に入れた。
「いただきます」
そうしてできた朝食をモソモソと食べる。寝起きだけど、ちゃんと目が覚める味だ。
寝起きでもはっきり分かる美味しさだった。朝からこんなに美味しいものを食べれるのだ。改めて、朝食のありがたみを感じる。
海斗なんか、いつも朝食を抜いてるって言ってたっけ。
ちゃんと食べないとダメだ、と今度釘を刺しておこう。
さてと、ご飯も食べたし、とりあえず午前中に宿題終わらせとくか。
食器を片付け、勉強机に向かう。さてと、何ページからだっけ……。
教科書をパラパラめくりながら、今日やる分のページを探す。
今日は72ページか。これを夏休みが終わるまでに、毎日やらなくてはいけないなんて……。
くっ、僕の真面目な性分が憎い! 僕はこういう毎日やらないといけない課題なんかは、毎日計画的にコツコツとやる性分なんだ。
しかし、海斗なんかはどうせ夏休み最終日までやらないだろうことは明白だ。前も僕に宿題を写させてくれと言っていたので、どうせ夏休みもこの手段を使うつもりなのだろう。今回ばかりは頼まれても、見せてやらないからな。
いっそ、海斗みたいに宿題のことも気にせず毎日楽しく生きている方が人生楽なのかもな。海斗と性格を交換したい……。
あ、いつのまにか思考が脱線してしまっていた。ダメだ、宿題に意識を集中しなくては……。
僕は海斗のことは一旦忘れ、宿題に意識を集中させた。
えーと、この問題は……。
––––ミーンミーン……
これは教科書を読めば分かりそうな問題だな……。
––––ミーンミーンミーン……
よし、後もう少しで分かりそう……。
––––ミーンミーンミーンミーン……!
う、うるさい! セミがうるさくて課題に集中できないな。
僕はセミの声に半ば苛立ちを覚えていた。
何かセミの声を遮断できる良い方法はないかな……。
外部の音を遮断するもの……。こういう時に打ってつけなもの……。
僕はぐるぐる頭の中で考える。
そうだ、こういうときはイヤホンを付ければいいんだ。
僕はそう思い立ち、早速イヤホンを取り出して、スマホに繋げ、そのまま音楽を聴きながら課題に取り組むことにした。
途端に、一気にセミの声は聞こえなくなり、音楽の音だけが鼓膜に響いた。
やっぱりイヤホンは良いな、外部の雑音を消してくれる。
僕はそのまま、課題に取り組んだ。
*
課題を始めて一時間半。
音楽を聴いたおかげなのか、朝ごはんをしっかり食べたおかげなのかはわからないけど、無事に宿題は午前中に終わらせることができた。午後はたっぷり、好きなことをしよう。
イヤホンを外すと、まだセミは鳴いていた。
セミの声は今日みたいにうるさいと感じることもあるけど、心が落ち着いているときに聞けば案外風情があるものかもしれない。
僕はセミの声を聞きながらそう思っていた。
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