もうすぐ夏休みだ

「頼むよ。一生のお願い!」

「お前、一生のお願いを一生に何回使うつもり?」


 スマホ越しに海斗の悲痛な声が聞こえる。どうやら宿題を写させてくれという

頼みらしい。


「前もそうやって僕に頼んでたよね。いくら友達とはいえ、僕もそこまで海斗に

甘くするつもりはないよ」


 僕は海斗に冷たく言い放った。たまにはこうしてキツく言った方が、海斗にも

響くかもしれない。


「そんなつれないこと言うなよ。見せてくれるだけでいいからさ」


 しかし海斗は折れない。こういうくだらないことには頑固になる奴だ。


「たまには自分で自力でやれよ。自分でやる力も必要だぞ」


 僕は海斗に言った。ちょっと僕は苛々しはじめている。


「そんなこと言って、今日は土曜日だろ。明日俺が夏弥ん家に行って、

宿題を写させてもらうということで……」

「なんで海斗が僕の家に来る前提なんだよ。僕は望んでないよ。とにかく、宿題は

自分でやれよ。じゃあな」

「あっ、おい待て––––」


 僕は通話終了の赤いボタンを押した。そのままスマホをベッドに放り投げる。

全く、海斗には呆れるな。宿題くらい自分でやればいいのに。


 宿題か……。宿題……。あっ、宿題といえば、もうすぐ夏休みじゃないか!

僕は宿題という単語で、夏休みという存在を思い出した。


 夏休みかぁ……。僕は今年は勉強漬けかな。海斗が遊びに誘ってくるだろうけど。

それも海斗に程々に付き合いつつ、僕はこの夏休みを有意義に過ごすつもりだ。


 夏休みまで、あともう少しだ。よし、頑張ろう。僕はふと窓を見やった。


 窓の外には、入道雲がもくもくと顔を出していた。


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