第5話 伝授

     五


「なぜ三姉妹さんしまいれて来たのですか?」

赤瞳あひと見極みきわめられないきずななんじゃないかしら?」

次妹つぎまいが、女神様おねえさま配慮はいりょしたんじゃないの?」

「おだまり、三妹さんまい

 次妹が、三妹をいさめた。それをた、うさぎが火糞ほくそんでいる。


 卑弥呼は表情ひょうじょうえぬまま

卑弥呼わたし出汁だしにしたいようですが、そのじつは、赤瞳あひと思惑おもわくどおりなんですよ。気遣きづかいよりも、先の展開てんかい予測よそくしなさい」と、妹たちをたしなめた。


 うさぎは三姉妹に

「ここは紀元前きげんぜん6000年の日の元の國です。一説いっせつによると、ユーマ(地球外ちきゅうがい生命体せいめいたい)があらわれて、人に知恵ちえさずけたと言われる時代じだいです」と説明せつめあしながら、三姉妹を電磁籠でんじかごとりんでいた。

 大気中たいきちゅう元素げんそ割合わりあいことなる時代じだいゆえに、からだ風化ふうか速度そくどがり、機能きのう障害しょうがいこさないためである。


「人というものは、ホモサピエンスと原人げんじんとの異種いしゅ後尾こうびまれました。知恵ちえあたえた者を『神』とすることで、精神せいしんてき支配しはいはかったのでしょうね」

 うさぎは言いながら、めずからも電磁籠でんじかごおさまった。


女神様おねえさま是正ぜせいしたいのは、六弟ゼウス悪行あくぎょうよ。神の傲慢ごうまんが、人々ひとびと宿やどされたことで、この世を酒池肉林しゅちにくりんとしてしまったのよ」

百鬼夜行ひゃっきやこう先頭せんとうは、悪意あくいかたまりの、真似まねの神なの。引きずるように続く者たちは人間ということなのよ」

「神々が持つ特殊とくしゅ能力のうりょくをひけらかして、人間をとりこにしてしまったようね。取り込まれない一握ひとにぎりの人間もるんだけど、蔓延はびこるのにいたるのをめられなかったことを屈辱くつじょくおも女神様おねえさまが、暗躍あんやくしたのはわかるわよね」


悪者わるもの退治たいじするの?」

 みさきはひとみかがやかせていた。


「運転手さんの言う通りにすれば、みさきちゃんがヒロインになれるんだよ」

 うさぎは、みさきの正義せいぎかんはぐくむつもりでいた。


「ならば、ステッキが必要ひつようだよ」


らないさ。みさきちゃんの心がはな電磁波でんじはを、運転手さんたちが培養ばいようするんだ。悪党あくとうらしめるだけだからね」


更正こうせいさせるのが目的もくてきなんだね」


「そういうことよ、ゆあちゃん」


「わたしの心から、電磁波が発射はっしゃできるの?」


に見えないほど微小びしょうだけど、人間はみな放出ほうしゅつしてるの。そのために、お日様ひさまてらされると、元気げんきるのよ」


放射能ほうしゃのうちからりて、放出ほうしゅつしてるんだね」


「そういうこと、りうちゃん」


 人はおもいをかよわせるために、言葉ことばわす。

 物心ものごころがつくことで、自身じしん記憶きおくにものこせるようになる。人としてはばばたくために、経験けいけんとしてとどめるのである。その総称そうしょうがDNA(遺伝子いでんし)と言う。がれる理由りゆうは、子孫しそんわざわいを回避かいひしてしいからである。


 人はそれを継承けいしょうすることで、防衛ぼうえい本能ほんのうはたらく。それがRNAという免疫めんえき効果こうかすのだ。必要ひつようとなる時間は、人それぞれである。


 効果こうかも人それぞれなのは、同じ個体こたいではないことを証明しょうめいしてる。双子ふたごつ子はおな遺伝子いでんしだからていてたりまえとなるのだ。

 姉妹にも本質ほんしつというかたちで、のこされる。両親りょうしんからがれるから、割合わりあいちがう。その違いで、個性こせいことなるのだ。時代背景じだいはいけいはぐくまれるものだから、本質ほんしつ資質ししつわる。


 人が人をろうとしないかぎり、かくされた能力のうりょくを引き出すことはできない。能力は可能性かのうせいとして、無限大むげんだいはぐくむことができるもの。育むために必要ひつようなのは、純真じゅんしんな心なのである。


 努力どりょくが人にせられた理由りゆうは、目標もくひょうさきにある特殊とくしゅ能力のうりょく辿たどいてしいから。そのために、可能性かのうせい無限むげんになるのだ。それに気付かないようだから、こたえにこだわってしまうのだ。辿り着ける先にあるものがゆめで、その価値かち気付きづけるもの偉人いじんということになるのである。


 終着点しゅうちゃくてんめるのが自身じしんならば、可能性かのうせいが手のとど範囲はんいということになる。その先にある景色けしきは、だれたことのないもので、感慨かんがいぶか光景こうけいなのだ。


 紀元前きげんぜんさかえた高度こうど文明ぶんめい終焉しゅうえんむかえてしまったのは、その境界線きょうかいせんえられなかったからだろう。ひとつのこたえにこだわった結果けっかということになるのだ。


 現在げんざい文明ぶんめいも同じようにすすんでいるから、予言よげんにとれるのである。その危惧きぐが、女神を動かしていた。


「!?、おでなすったようよ」

 三妹が、六弟ろくてい気配けはいを感じ取った。

「赤瞳、どうするのよ」

 次妹は動揺どうようかくせないでいた。うさぎはそれで、電磁籠でんじかごいた

「三姉妹の心に戻って下さい」

 三女神が、三姉妹の心に非難ひなんした。


 いかづちごとあらわれた六弟ろくていひかりはじばし、姿すがたあらわにした。


「おや、見覚みおぼえのある小童こわっぱるじゃないか」

「おりですね、六弟さん」

「そのせつは、世話になった」

後世こうせいの話しは、後世でしましょう」

「ならば何故なぜ此処ここる?」

「六弟さんがたらんだ御先祖ごせんぞ様方さまがた自由じゆうにするためですかね」

「?、したところで、とき粛正しゅくせいからのがれられぬわ」

氷河期ひょうがきのことですか? それなら大丈夫だいじょうぶです。何時いつ時代じだいでも、偉人いじんたちがみちびきますから」

「ほぅ、言うようになったな」

六弟あなた傲慢ごうまんなやり方にれただけですよ」

「その自信じしんはなんだ」

玉手箱たまてばこ(宇宙うちゅう中心ちゅうしん)に覚悟かくごっただけなんですがねぇ」

感性ばばあ了承りょうしょうしているのか?」

 六弟が仁王におうちで威嚇いかくした。

四弟ハデスさんの場所ところでの失敗しっぱいが、覚悟かくごめさせたようですよ」

 うさぎはこたえながら、両手を後ろにまわした。

「そうか。れるものならやってみろ」

 六弟がいぶかしげな笑顔えがおつくろった。

「はい。はっ!」

 うさぎは言った刹那せつなに、電磁籠でんじかごはなった。


「うお~!! くそっ、本当にりやがった。ならば、下僕しもべたちよ、さんじてわれまもれ」

 六弟が拡散かくさんした思念しねんぎつけた魑魅魍魎ちみもうりょうが、こぞってあつまる。


 卑弥呼は、みさきの心に不安を投げ掛け、電磁籠を飛び出した。気心が通じ合う姉妹も同様に飛び出していた。


「やっぱり居たか。飛んで火に入る夏の虫だな」

 六弟の傲慢ごうまん余所よそに、うさぎは、三姉妹の電磁でんじかごつなげて、巨大きょだいおりにした。三女神が思念を重ね合わせて、魑魅魍魎を檻にみちびく。


「どうするのよ、この魑魅魍魎ものたちは?」

 三妹の問い掛けを、うさぎは無視して

「みさきちゃん、運転手さんの言葉をなぞって」

わかった」

「宇宙を平穏に治める元素達よ。我等に力を貸したまえ」

「うちゅうをへいおんにおさめるげんそたちよ。われらにちからをかしたまえ」

 うさぎは、みさきのうでささえて、両手りょうてあわせた。


 突き出されたりょう人差し指から放出ほうしゅつされる電磁波に呼応こおうして、集まる元素から光が生まれた。


「滅殺!」

「めっさつ!」


「うお~~~~」

 ひかり光線こうせんとなり、魑魅魍魎に発射された。


「りう、私たちも!」

 ゆあが居ても立ってもいられずに

「宇宙を平穏に治める元素達よ。我等にも力を貸したまえ」

「うちゅうをへいおんにおさめるげんそたちよ。われらにもちからをかしたまえ」

 姉妹の電磁波を眼に見えるものにするために、姉妹神が、うさぎのしたことを真似まねた。


「卑弥呼さん、わってください」

 うさぎにしたがい、卑弥呼が、みさきのかたをとり、電磁波でんじは思念しねんかさねた。

「何をするつもり、赤瞳」

「本当の監獄かんごく(宇宙の中心)へおくるんじゃないかなぁ」

「ならば今度は、赤瞳に力を貸さなくては?」

「大丈夫よ。感性かんせいさま引力いんりょくおぎなうはずですからね、次妹」


 うさぎは魑魅魍魎ちみもうりょうおりのまま磁力じりょく反発はんぱつ利用りようして、宇宙へ発射はっしゃさせた。地球ちきゅうを包むそうそとおくると、電磁でんじおり無重力むじゅうりょく空間くうかんを進む速度スピードを上げた。

 電磁でんじおり主素しゅそを引き寄せて、それを動力どうりょくげんに変えたのである。人の眼に映らないものが見える、うさぎだけは、その仕組しくみを知っていた。


「やったぁ~」

「正義のヒロインになれたね」

「あの怪物ひとたちはどうなるの?」

「悪しきたましい浄化じようかされる運命うんめいなのよ」

「それでも死なないはずだよ」

「良かった」

「魂は死なないけれど、悪意はかなら再発さいはつするみたいだよ」

消滅しょうめつしないの?」

善悪ぜんあく一対いっついだからね」

「ひとつだけにすることはできないのかなぁ」

「ひとりぼっちはさみしいよ。だから運転手さんは、みさきちゃんが話し掛けてくれることを待っているのさ」

「でもね、バスの中ではしずかに、っておこられちゃうもん」

「大声で話さなければ良いだけさ。だから運転席の後ろに座ってくれる人が好きなんだ。ルールはルールだけど、ゆるされる範囲はんいもあるんだからね」

「それって、グレーゾーン、ってこと?」

窮屈きゅうくつだと、本領ほんりょう発揮はっきできないでしょう」

たしかに!」

「それじゃあ、現実げんじつかえろう」

 うさぎにみちびかれて、三姉妹が電磁籠におさまり、うさぎのふところいだかれた。そして現在いまに帰って行った。


 うさぎは実在じつざい身体からだに、三姉妹を送り届けた。この時に刻まれたのは数秒であった。・・・らしい。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る