察知 立ち止まる私

 海を彷徨っていた私は、大きな岩石にぶつかった。だけど、その衝撃によって私の世界が拓けた。


 高校生の私。地域で1番の進学校に合格した。天才と呼ばれるべき人たちが多いこの学校では、私が持つ勉強に対しての自尊心すらも、泡となって消えてしまった。

 第1回定期考査中。急に文字が頭に入ってこなくなった。遠のる意識。響き渡るチャイム。まるで重力に押し潰されているかのように椅子から落ちた。

 そして、医師から告げられたのは、自律神経失調症による起立性低血圧症。毎日3食3種類の苦い薬を今もずーっと飲まされている。

 それからの生活というのは、前日に鞄の準備をしてから、朝5時50分に目を覚ます。平衡感覚がとれないまま床を這う。6時半には家を出て、7時に学校へ着く。なぜこんなに早く行く必要があるのか。それは、目が覚めてから体の調子が良くなるまで時間がかかるからだ。朝は、階段を上がるのにひどい目眩に耐えなければいけない。誰もいない学校は、自分のペースで生活できる。そして、40分の勉強と30分の朝練。このルーティンにしてから、昼間の体調が安定した。


 そんなこんなで生活しているうちに、全力で何かに取り組まなければいけないという意識を忘れていた。ふと思った。これでいいんだ。その時、海の中が、見えるようになった。広がっている綺麗な景色を。

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