迷走 彷徨う私

 沈まなくなったのは、あの頃からだったかな。


 中学生になった私は、体幹が鍛えられるというソフトテニス部に入った。やっぱり空手は続けたかったから、生かしたかったのだ。部活も正直、全力な気持ちでは取り組めなかった。だけど、1つ変わった。趣味ができた。中学1年生で折り紙にはまった。趣味って、元々全力でやるものじゃない。だから純粋に楽しめた。全力でできない自分を責める必要がなかった。気持ちが楽になった。海の中でも足が定まった。動けるようになった。

 

 だからこそ、私は彷徨うようになった。下には、沈まない。その代わり、横へ動くようになった。楽しむことができるのなら、私でも再び全力で何かに打ち込めることができるのではないか、と。私は、探した。中学2年から高校1年までたくさんのことをやってみた。心理学の勉強から人間の構造、石の勉強、フランス語、ミサンガ、手話、作文、料理、ヘアメイクの勉強そして3歳から13歳までやったピアノも再開してみた。だけど、全て楽しいだけだった。ただ趣味が増えていく一方で、当時は無意味なものだとさえ感じてしまっていた。

 海を彷徨う私は、まだ、周りを見る余裕がなかったんだ。


 

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