第8話 ユメ
「つまり、尊厳ある皇室の降誕の時、邪悪なる魔神の誕生もあり、善悪の二元性が生じたので」
ぐらぐら、ゆらゆらと世界が回る中、重力もよくわからないままに僕は机と椅子がたくさんある見たことないような景色の中にいた。
周りにはたくさん人がいて、白と黒の服を着ていた。
僕の右隣の人は伏せていて、顔がよく見えなかった。
「聖戦とは、人間の内に深く刻まれた特異な現象であり、成長のプロセスにおいて避け難き事象でもある。それは破壊の象徴であり、時代の節目である。聖戦による破壊が起こるたびに、技術、政治、あらゆる要素が新たな段階へと進む契機となっている。」
前の方に立っている人は黒い板を棒で指しながら何かを説明していた。
どうにも言葉が聞き取りづらく、また顔もよく見えなかった。
周りを見るとどれもそんな感じだった。
誰もいない机も形を常に変えているようで変えていない。
はっきりしているのは窓の外に見えるさびれた街の風景で、所々で煙が上がっていた。
「ピーノ!」
誰もいない机の方を見るとグーニが座っていた。
「静かにしないと怒られるぞ」
「はーい」
「遙か昔、アダムとイヴという二人が、神々の作り出した諸モノに名を賦している使命を果たしながら、エデンの園に居を構えていた。彼らは神より「善悪の実」だけは手を付けるなと告げられたものの、蛇の誘いに忍び寄られて、結果的にはその実を頬張ってしまい、神から罰せられた。これは隔絶されし最初の人間にも論せられる共通事象であり、善悪の争いこそが戦火の起源である。」
チャイムが鳴ると先生の話は終わり、みんなが椅子からガタガタと立ち会がって外へとはしていった。
「ね!グーニちゃんと付き合ってるってマジ!?もうちょっとで徴兵だよ!?」
「妹だよ。双子だけど」
「ちぇー。なーんだ」
徴兵・・・死ぬのかな。
「対空砲火隊長!8.8cm砲の射撃準備完了しました!」
やけに近い距離でアルヴェンは大声で準備完了を隊長に知らせた。またテントで怒られるんだろうなあと思いながら、季節外れの晴れ空を見ながら何を考えるわけでもなくぼーっと見ていた。
吐く息は白く曇って、冷気の中へと消えていく。
「戦闘機隊より電報!敵機多数レーダーにより確認!コード『デイジー』爆撃機による中隊と思われます!」
「高度6000!射程内に入るまで残り200
「そうてんかんりょー!!」
今日は死なないかな、と。
「あなたを心よりお待ちにしております。パスワードは、
ふとそんな訳のわからないところで夢が覚めた。
よく考えると納得していたこと全ては支離滅裂で意味不明だった。
もう夢の内容も覚えていなかった。
隣ではグーニが笑顔で寝ている。
夢なんかよりこっちのほうがよっぽど面白いと、改めて思った朝だった。
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