第6話 アイノオベンキョウ

 水たまりがあったところから更に進むと、崩壊がとてつもなくひどい場所があった。

 地面は信じられない深さでえぐり取られ、瓦礫はあたりの建物を壊していた。

 穴に落ちているせんしゃもギリギリ形を留めてるという感じで、上についている「ほうとう」が遠くに飛ばされていた。

 ばくだんの恐ろしさを初めて感じた気がした。

「ここ越えるのたいへんだねー…」

「全くだよ。もっとこう、人を大切にしないのかな」

「でもれーしょんは食べたい…」

「考えてるとお腹空くから早く行くよ」

 崩れた建物や瓦礫をグーニカリバーを括り付けたロープで登った。

 グーニカリバーは軽い力で刺しているのに、それだけで硬い建物の壁に深く突き刺さる。

 グーニはどうしてこうも良くわからないものを拾えるのだろうか?

「ピーノー!押してぇ!!」

 グーニですら音を上げるこの壁、僕が登れるのだろうか?

「…グーニまた重くなったな」

「そうかなあ?」

 僕たちの知らない戦争で僕たちがここまで苦労するのは理不尽だと思った。

 僕たち二人だけでこのひどい瓦礫の山を超えなきゃいけなくなったのも、前いた人が戦争をしたからだし。

 疲れてあまり考えがまとまらなくなってきた。そのせいか僕は誰かもわからない「前の住人」に少し怒っていた。

「ねえねえピーノ」

「何?」

「前に『あいがあればせいそうは起こらなかったらしい』っていってたじゃん」

「戦争ね」

「あいってなに?」

 ガッ!!

「うっ」

 足をかけていた建物の窓が少し崩れ、落ちかけた。

「…登ってからにしようグーニ」

「はーい!」

 荷物は上り終えた後にロープに括り付けて二人で引っ張ってやっとだった。

 建物を登り終え、あたりを見回してみると、これと同じような瓦礫の山や建物がゴロゴロあって気が滅入った。

 でも僕は愛について考えるという口実を持っているから休憩はできそうだ。

「愛…僕も本で読んだ程度だけど、こう…男の人と女の人が口と口をくっつけたり抱っこしたり?特別な感情だってどこかで読んだ気がするけど」

「じゃあそれためせばなにかわかるのでは…!?」

「そんな世界が単純だったら今頃暇してるよ」

「うたぬせんしゃほうてきにゃああたらぬ!!」

 またどこかで覚えてきたことわざを言いながら傾いた建物の上でグーニは僕に突進を仕掛てきた。

 危険を察知した僕は押しつぶされる事を考えながら、どうにか落ちないようにグーニを受け止めた。

 ガァンッ!!!

 後ろの機械に見事に背中を強打してしまった。

「いてっ」

「ピーノ温かーい」

「グーニ、痛い。それに死にはへは」

「ピーノのほっぺたやわらかーい」

「ひふはれーひょんへっほうしゅひはんはほへ(実はれーしょん結構好きなんだよね)」

「ごめん!!」

「…いいよ」

 思えば何も知らない僕たちにとって愛とかそういうのは一番難しい問題なのではないだろうか。

 僕とグーニの間には愛はあるのだろうか?

 愛がなにかも知らずに本のままに愚痴をこぼしてしまったことを今になって後悔している。

「みーんな仲よくしてれば、こんなでっかい大穴もあかなかったのかもねー」

「…そうだね」

 愛、恋、恋愛。

 これらすべてを完結させた時に人は幸せを感じるらしい。

 行き着く先は誰しも一緒だけど、そのひと時をお腹いっぱいに楽しむ。

 いくら本を読んでも愛とかは分からなかったけど、グーニがそばにいてくれて一緒に夜ご飯を食べられるのは僕の最高の幸せだと思っている。

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