第3話 ハルメギドニテピクニック

 僕たちが生まれる前、生きていた人たちが作ったとてもとても強くて恐ろしい巨人達へいき

 そう表した本には「巨人はいるが、神はいない」と最後に悲しげに書かれていた。

 その意味を調べるために図書館で「セイショ」を探した。

 本いわく遠く、海を超えた先で作られた神様の歴史書。


「ろすとろんと中央図書館ってところに本当に「セイショ」はあるのかな?」

「ものすごく大きな図書館って書いてあったし、ここまできてあるかどうか心配はしたくないな・・・」

 400年前ぐらいにできたへいきでも、ものすごく分厚い鉄の板を悠々と貫通する威力を持っていたらしい。

 神様も怖かったんじゃないだろうか?


「ねーこれつかえるかな!」

 考えをめぐらせているうちに目の前を歩いていたグーニがいなくなっていた。

「グーニ、どこだ?」

「こっち!!」

 ボロボロの建物が多い中、唯一どこも壊れていない「せいびじょう」の奥の方からグーニの声がした。

「グーニ?」

 グーニのランタンが照らしていたのは、図鑑の「りくのへいき」にあった「98型 汎用装軌装甲車軍用小型トラック」だった。

 文明が崩壊を始める遥か前に設計されたもので、いろんなところで役に立ったらしい。


「動くかな!?」

「歴史書とかみる限り400年以上前のものだし流石に無理だと思う・・・」

「じゃあこっちは!?」

「え…」

 ランタンを落ちていた鉄の棒に引っ掛けて照らしてみると、せいびじょうが予想以上に広いことがわかった。

 途中途中で入り口があるのか、外からの夕陽が小さく差し込んできているところがあって、せんしゃに登ってみてみると、向こうの壁すら見えないほどだった。

 そして、たくさんのへいきがそこらじゅうに置いてあった。

 どのへいきも沈黙を貫いているように薄暗さを見せていて、誰かが捨てた後時間が止まったというよりも、何か重い空気が漂っていた。


「なんだここは・・・」

 息を呑まれるような感覚があって、言葉を取り繕うのでやっとだった。

「グーニ、あまり遠くに行くなよ!」

「わかってるって!」

「・・・そうだ、電気つくかな・・・」

 ランタンを適当なところに置いて、僕も散策を始めた。

 ドアは大抵錆び付いてて動かなかったが、一つだけ開いている場所があった。

「そう・・・こ?倉庫かな」

 懐中電灯をつけてみると、そこには人が暮らしていた痕跡があった。

 食い散らかされたみんかんひじょうしょくの袋、ところどころ壊れたライフル銃。

 それと誰かの写真。

 男の人と女の人で二人写っていて、すごく幸せそうな顔をしている。

 でも、写っているのは二人だけで男の人の方は僕たちと違ってライフル銃を持ってもっと強そうなヘルメットを被っている。


「2467年2月12日・・・今って何年なんだろ?」

 調べようにもほとんどの機械が壊れているし、動いていてもそれが日時を教えてくれるとは限らない。

 落ちていた「かめら」も壊れていたし、電気のスイッチもなかった。

「ピーノー!」

 倉庫から出ようとした時、遠くから響くグーニの声が聞こえた。

「どこ?」

 最初入った入口の反対側でランタンを振るグーニがうっすら見えた。

 近寄るにつれ、グーニが立っているものの大きさがとんでもないものだとわかってきた。


 世界の最終兵器

 1つ目、ネルエトロ軍事主義国「アウルゲルミル級」

 圧倒的な強さを持つ移動要塞。

 空を飛ぶ強力な兵器たちを一蹴して、ついでに色々破壊してまわる恐ろしい兵器。

 その圧倒的な大きさや迫力に気圧されて、好奇心より恐怖心が出ていた。

「ピーノ?」

「…いや、何でも無い。すぐ行くよ」

 グーニのいるてっぺんに登ってみると、あまりの高さに驚いた。

「落ちたら死ぬな…」

「ねー夜だしご飯食べよー」

「呑気だな…」

 せいにじょうの入り口から差し込んでいた夕日もすっかり影に変わり、この広大な建物の中の光は僕たちのランタンだけになっていた。


「それなにあじ?」

「えーっと…野菜スープ味」

「なにそれおいしそう」

「一口いる?」

 グーニは自分の持っているれーしょんと僕のみんかんようひじょうしょくを見比べて辛そうな顔をしながら人差し指をゆっくり立てた。

「いいんだよ。ほら」

「ありがと!!!」

 2つのランタンの光がグーニの幸せそうな顔を優しくうつした。

「おいひぃ!」

「だろ?」

 神様と巨人が戦った丘、「メギドの丘」

 僕たちはそこで不思議なピクニックを楽しんだ。

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