第2話 トドカヌカイワ

 ト、ト、ト、ツーツーツー、ト、ト、ト

「報告、ロノグラード市第二防衛戦崩壊!」

「ノルド・レブレム級より戦果報告!敵損害、航空母艦2隻、コード『ケイト、チョーカー』、非イージス巡洋艦4隻、コード『ジーク、チャッキー、オルト、エルダ』全撃沈!自艦小破!」

 ト、ト、ト、ツーツーツー、ト、ト、ト

「ルードグラーフ総合工業地帯が爆撃されました!生産ラインの3分の2が停止!」

「おかあさ―」

 ト、ト、ト、ツーツーツー、ト、ト、ト


 終末はSFのようには訪れない。

 宇宙人の襲来でも、巨大隕石の落下でも、未知のウイルスの蔓延でもない。

 ヒトは自らの手で、自らの住処を破壊し尽くす。

 同房を殺し、殺しあい、憎しみあう。

 それがヒトの知能の高さゆえ、愚かさゆえに起こる最終戦争。


 図書館の中心にたくさんの物資と共に落ちていたそのボロボロの本の書き出しはそんな感じだった。

 意味は大してわからない。でも、僕たちしかこの世界にいない理由に関係していることはなんとなく分かっていた。


「ピーノ〜疲れたから休も〜」

「グーニ、三歩歩いただけだぞ。もうカミナリはこない」

「や゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛」

 背中に引っ付いて離れようとしないグーニを手で無理やり引き剥がしながらびしょ濡れの大きな道路を歩いた。

 大きな道路を太陽が落ちていく方向に歩くと、進むにつれて建物の見た目がどんどん変わっていく。

 バラバラだった見た目が同じになっていって、大きな建物も増えていった。

「ろ、すと、ろんと…さんじゅう…けーえむ」

「ろすとろんと!?」

「目的地だな」

「あれ、でもやじるし…」

 ロストロントと書かれた青い看板の矢印は途方もなく長い、先の見えない方を指していた。

「…今日はもう日が暮れそうだし、そこらへんの建物で寝よう」

「うん!」


 日は大分傾いて、遠くに見えるすごく大きな何かが鋭い光を放ち始めた。

 本に書いてあった「灯台」というやつだと思う。

 寝るのに入った「だい32ぐんびそうこ」にはボロボロのせんしゃやよくわからない部品、れーしょんがバラバラにたくさん落ちていた。

「おおおおお!!!!」

「転ぶからあんまりはしゃぐなよ」

 中はとても暗くて、ランタンがなければ何も見えないくらいだった。

「なんだこのボタン・・・」

 ボタンは固くて動かなかったが、思いっきり押してみると「ジー」という音がし始めた

 なんだろうとしばらくのぞいていると、急に周りが昼のように明るくなった。

「でんきのボタンか…」

 本にもあった、それまでの全てを一気に変えた発明、電球。それは夜でもものすごく明るくて、好きな時に消せて好きな時につけれるウソような道具。

 エディソンさんが作ったとか本には書いてあった。


「いて!」

 グーニは急に明るくなって目が眩んだのか、何かの機械に足を引っ掛けて転んでいた。

「大丈夫?」

「大丈夫!」


 グーニは勢い良く立ち上がって、色々集めて何かをし始めた。

 僕はグーニがつまづいた機械が少し気になったので拾い上げてみた。

 見た目はボタンが一つついているだけで、それ以外の特徴は数字が書かれた板が貼り付けられているだけだった。

 試しにボタンを押してみると「とー」という高い音が出た。

「何それ!」

「わからない・・・でも」

「かして!」

 グーニは僕から機械を奪い取ると、楽しげに押し始めた

「と!とー!と!とー!」

「何それ」

「ピーノもやってみてよ!楽しいよこれ!」

 グーニに機械を押し付けられ、よくわからないままグーニの真似をしてみた。

 トートートー、ト、トー

「いいねこれ!」

「確かに面白いけど…」

「もっとやるー」

 とと、とー、とと!


 僕はとりあえずカバンの中から図鑑を取り出した。

 これが何か調べないと、危険かどうかもわからないからだ。

 と、とー、ト、とー

 機械のページにはそれっぽいものはなかった。

 押したら音のなるボタンはたくさんあったけど、何も起きないものはなかった。


 と、とー、と、トー、と!

「生き物……??」

 とと、とー、トと

 図書館で読み漁った生き物はみんな丸くて可愛い感じだった。

 ほとんどの本に100年以上前にいなくなったと書かれていたから本当の姿はわからないけど。

 ト!

「ないな…へいき?」

 とー!

 りくのへいき

 せんしゃ…たいくうほう…ちたいくうみさいる…ごりあて?

 なんだか雰囲気は似ていたけど、全然違う形をしている。


 ト、とー、トト!!

 うみのへいき…

 絶対違う形をしている。

 大きいし、強そうだし。

 トト、トー!!

「グーニ、そろそろうるさい」

「とーー!!」

「れーしょん全部食べるよ」

「だめ!!!」

「…ご飯食べようか」

「うん!」


 その日は明るかったけど、ランタンをつけていつも通り囲って食べた。

 いつもより美味しく感じた。

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