本編
第1話 ピーノトグーニ
「ピーノ、雨がふりそうだよ」
「食べ物探しておかないとおなかすくだろ」
「…れーしょんじゃダメなの?」
「マズイ!」
「濡れたくないよ〜」
亡霊のように静かに佇む、住む場所として使われていたはずの大きな建物の通りでは『せんしゃ』や『ばくだん』がたくさん転がっていた。
元々は戦争をするために造られた、ものすごく強力で怖いものだったらしいが、僕たちはこれを食べ物箱としか思っていない。
「あった?」
「みんかんようひじょうしょく。大当たりだ」
「やった!!」
「2つしかなかった。はぁ、もうれーしょんは食べたくないのに」
「『ちょこれーと』とか『あっぷるぇそーす』とか美味しいじゃん」
「甘すぎて吐きそう」
「えー」
トテンッ
被ったヘルメットに小石がぶつかったような音がした。
軽い音は次第に増えていく。
トトテンッ、トテテンッ
「グーニ、雨だ!」
「さっき言ったじゃん!!」
ザァァーーーー
瞬く間に可愛らしく鉄を跳ねる音はとんでもない轟音に変わった。
「うわー…」
「ぼーっとせず屋根の下行くよ!!」
コートを絞ると驚くぐらいの水が出てきた。
洗っていなかったからすごく濁っていたけど。
「濡れたね」
「まさかこんなに降るとはな。グーニもみんかんひじょうしょく食べるか?」
「れーしょん食べる。みかんひじょうしょく2つしかないんでしょ?」
「…ありがとな」
グーニがいつもの鼻歌を歌いながら袋を開け始めた時、「どおおん!!」とも「がしゃああん!!」とも言えるとにかくよくわからないぐらい大きな音が空から響いた。
「ひゃぁあ!」
グーニはれーしょんを地面に落とし、階段の下に隠れてしまった。
「カミナリ…かな」
「かっかみ!?」
「落ち着けグーニ。屋根の下にいれば死なない」
「そっ外にいたら死ぬの!?」
「そこまでは本に書かれていなかったな」
「でも私怖いからここいるっ!!!」
グーニの前に放られたままのレーションをおいてやり、自分は階段に座って食べた。
「ピーノは怖くないの?」
「うん」
「なんで?」
「…さあ?」
生まれたというか、急に出てきたというか、とにかく気づいた時には僕たちは図書館という場所にいた。
そこだけなぜか明るくて、夜でも本を読めた。
知らないことはそこで全部知れた。
言葉、文化、天気、技術。
グーニは本を読むのより本棚で遊ぶのが好きで、なかなか本を読まなかったが、僕は本を読むのが面白くてたくさん読んでいた。
僕は難しそうな本にあった『コウキシンオウセイ』なのかもしれなくて、本に書いてあることが本当に起きたり、本にあったものに出会った時は怖さがいつの間にか無くなってて、ついつい触れてしまう。
もしかしたら、知りたいから怖く無いのかもしれない。
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