【31】VSノーキャスル王国騎士団
騎士団といえども、常に安全で争いに晒されていない状況が長く続いた人間は大した相手ではない。その上、騎士団はどちらかというと、多対多を想定した訓練が主であるためあまり1対1の実力はそれほど高くない。少人数の人間を相手したり、1体の魔物を数人で討伐することに慣れている冒険者の方が厄介なことが多いのだ。
まぁ、とは言っても騎士になれるんだからそれなりの実力はあるんだけどね。
「くそっ!! こいつすばしっこいぞ!!」
「何やってるんだ、囲め囲め!! 敵はたったの一人だぞ!?」
敵の攻撃を避けつつ、戦いながら敵の実力を測る。
1、2……、人数は13人……。実力は……、アリネと一緒にいた盗賊達よりも少し強いぐらいか……。って考えると、やっぱりアリネ達って盗賊にしては強かったんだなぁ。
そんなことを思いながら、敵を無力化する方法を考える。確かに今の俺の実力であればこの者達を殺すことはできるが、それをやってしまっては後々面倒なことになる。この国のことを考えると、少しでも騎士が残っていた方が国民のためにもなるだろう。
「さてと……、そろそろ終わらせようか」
敵の実力を図り終え、敵を殺さない程度の力加減が分かった。敵の攻撃から身を防ぐのはここまでにして、攻撃に回ることにした。
まずは2人、頭を掴んで思いっきり頭同士をぶつける。兜を付けている分頭が余計に揺れていることだろう。そして、3人を
倒れている騎士達を避けながらジョーダルの元へと歩いて行く。
「さぁ、次はお前か? ジョーダルよ」
ジョーダルは流石に騎士達がここまですぐに倒されるとは思っていなかったのであろう。眉間にしわを寄せて、口元がピクピクと動いており、いつもの凛とした表情は崩れていた。
俺は今までの澄ました表情よりもそっちの方が人間臭くて好きだぜ。
大きくため息をついたジョーダルはいつもの澄ました顔に戻す。
「……ふん。私が行くまでもない。おい、イリカ」
イリカはゆっくりと首を動かしてジョーダルの方を向く。
……何か、あいつの言うことだけ聞いて、俺の言うことが無視されるってのは面白くないな。
そんなモヤモヤしたものを感じながらも2人の様子を眺めていると、ジョーダルはだるそうに俺の方を指差した。
「イリカ、あいつを倒せ。あー、殺してしまっても構わんぞ。全力でやれ」
そう指示を出すと、イリカは腰元の剣を抜きながらこちらに近づいてくる。
「はぁ……、結局こうなるのか……。イリカといいアリネといいどうしてこう戦うことになるのかねぇ……。まぁ、弟子の成長を間近で見れるのは嬉しいけども」
先ほど戦った騎士達とは放っているオーラが全く違う。流石は副団長になっただけのことはあるなと素直に感心した。騎士達と同じように戦えば確実に負ける。そう感じた俺は大きく息を吐いて集中する。
「さぁ、こいイリカ。アリネにも言ったけど、久しぶりにお前の実力を見せてもらお……」
言葉を言い切る前にイリカが切りかかってきたため、その攻撃を先ほど倒れている騎士から借りた剣で受け止める。
「まったく……。アリネの時もそうだけど、俺のことを師匠だと理解して戦ってくれよ……」
こうして、転生後、2人目の師弟対決が開始した。
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