【27】拭えぬ違和感
宿に戻ってベッドに横になるとフッと緊張が解けた。ボーっと天井を眺めながら、今日会ったことを思い返していく。
「うーん……。どうだろうなぁ……」
イリカも元気にやっているようで、イリカ自身には特に問題はないように感じた。ただ、漠然とした違和感というか、不安というか、何とも形容しがたい感情がずっと引っかかっていた。かといって、どうしてこのような感情があるのかは説明できない。そのため、王城を出てからずっとモヤモヤしていたのだ。
「ジョーダルねぇ……。何だろうなぁ、あの何とも言えない胡散臭さは……」
ジョーダルは話してみると好青年といった印象ではあったが、どうも信用しきれない部分があった。ただ、どこが信用できないのかは説明できない。理由を無理やりつけるのであれば、今までの経験としか言いようがない。
1人では考えていても仕方ないかとヨウを召喚することにした。ヨウを召喚すると、今までの出来事を伝える。そして、ジョーダルを信用しきれないこと、このまま街を離れてしまってもいいのかということを伝えた。
「――――ってことなんだけど、ヨウはどう思う?」
「そうじゃのぉ……」
昔から何か悩み事があればヨウに聞いていた。ヨウとは契約しているものの、俺を変に持ち上げることも無ければ、俺を騙そうとしたり、本心を隠そうとしたりすることは無かった。そのため、中立な意見を聞くにはヨウが最適であったのだ。
「少々考え過ぎなのではないかと思うが……、お主の直感も無視できんのは確かじゃ。それになりより、お主自身が確かめてみないと気が済まんのじゃろ?」
「あー、うん。そうなんだよね。このモヤモヤしたままこの街を離れるのは気持ちが悪いんだ」
それに、重要な任務というのがどうしても気になるんだよなぁ……。
騎士団の仕事としては、王族の身や街の安全を守ることが挙げられる。ただ、重大なことが起きない限り、王都の防衛を担う騎士団は動かないのがほとんどだ。もし動くのであれば、街や国の存亡がかかっているときぐらいであろう。
でも、王都に来るときに色々情報を集めてたけど、そんなことを言ってる奴なんて1人もいなかったんだよなぁ。
現状ノーキャスル王国は宥和政策を取っており、周辺国と争っているという話は聞いたことが無く、戦争に入るといったことは考えられない。それに、近隣における魔物の出没情報や盗賊などの街に害をなす存在がいるといった情報も無かった。そのため、わざわざ騎士団が動くほどの任務というのがあるとは思えない。
「ヨウは騎士団長が言ってた重要な任務って何だと思う?」
「ふむ……。わらわは人間の国について詳しくは知らぬが、話を聞く限り重要な任務があるとは思えぬよ。もしそのような任務があるとしたら、何処かの街か国に攻め入るか、誰かを殺すことぐらいしか思い浮かばん」
「なるほどね……。やっぱりヨウもそう思うのか……」
どこかの街か国に攻め入る……、誰かを殺す……。いや、まさかな……。
ヨウの言葉を聞いてある考えが浮かんだが、あまりにもぶっ飛んだ考えであったため、ひとまず置いておくことにした。
「まずは、どうにかして情報を得ないとだけど、このままだと絶対にバレるよなぁ」
情報を集めるにしても騎士団の目を欺かなければならない。というのも、俺の予想が正しければ、恐らくジョーダルは俺に見張りを付けるだろう。考えすぎかもしれないとも思うが、念には念を入れたほうがいい。
どうにかして騎士団の目を欺けないかと考えていると、ヨウが俺の肩に乗ってきた。
「そうじゃなぁ……、わらわが1つ策を授けてやろうかの」
「策?」
「そうじゃ。ほれ、耳をこちらに向けよ」
ヨウの口元に耳を近づける。その内容を聞いて、確かにそれなら上手くいきそうだと感じた俺は、さっそく準備に取り掛かることにした。
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