7.ボクは、間違えた
ボクが二人を呼び止めてから先のことは、ぼんやりとしか覚えていない。
〝夕奈さんの話を、ちゃんと聞いてあげてください〟とか。
〝彼女は口下手だけど、あなたと仲良くしたがってるんです〟とか。
〝せめて、顔を見て
そんなことを、まとまりなく口にしたような気がする。何を喋ったのか覚えられないほど、全く整理できていなかったし、やっぱりボクはこういうことが下手なんだ、と自覚せざるを得ない。
夕奈さんの義理のお母さんは……今にして思えば本当に義母かも分からない女性は、見知らぬボクにいきなり話しかけられて、明らかに戸惑っていた。
ボクとの間に繋がった『モノサシ』は、当然のように長い。
それでも、ボクを貫く長大な『モノサシ』に、構わず言葉を続けた。
夕奈さんの良い所とか、不器用な所とか、思い悩んでいるのだとか……言わなくても良いような、余計なことも言っているかもしれない。
……ああ、そうだ、やっぱりこれは、余計なお世話だったのだろう。
そんなの、こうして話しかける前から、分かり切っていたことなのに。
ボクがいきなり、頼まれてもいないのに、こんな風に口を挟んで。
夕奈さんは――
「やめてよっ!!」
大きな拒絶の声と共に、ボクを睨み。
「……放って、おいてよ……」
ふい、と視線を外したのと……ほぼ、同時に。
夕奈さんからの『モノサシ』は――――消えてしまった。
……それからボク自身、どういう風に家へ帰ったのか、覚えていないけれど。
ただ一つだけ、これだけは、理解している。
ボクは、間違えたんだ、と。
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