第3話 かませ犬、出発
マジでまずい!
このままじゃフェンリルと戦うことになるし……
いやさ、別に俺も勝ち目のある戦いならいいのよ?
名誉的にもね?
でもさあ……これはない、これは。
「え、無理じゃん……」
俺の部屋は既に見張られているだろう
てか視線ビシビシ感じるし……!
「よし、寝よう寝てしまおう」
俺は寝た(現実逃避)
「それじゃあ行きましょうか!」
「あの、トイレに……」
「いいから行くわよ」
「あ、はい」
どうしよ……
俺は渡される荷物を持ち馬車に乗った。
「いやー、怖いところではありますが、フェンリル……楽しみですね!」
「そうね」
「はぁ……」
1人は元気で1人は適当、1人は絶望……って誰が絶望だよ!
まだだ、まだ逃げるチャンスが……
「ちなみに騎士が途中まで着いてくるから逃げられないわよ、街にも寄らないからこの馬車から出るのは騎士付き添いのもとお手洗いだけね」
「……もちろんだよ、逃げない逃げない」
このアマ!許さん!ころ……!
んん……! ま、まぁもしかしたらフェンリルが逃がしてくれるかもしれないし……だ、大丈夫、だよね?
《ミレーヌ視点》
私は常に保険だった。
跡継ぎはお兄様が、他の家との関係を強める婚姻は2人のお姉様で十分だった。
だから危ない事はいつも私がさせられていた。
その日も冒険者ギルドに向かわされ、神殺しを得た少年を見て、勧誘出来そうならしてこいとの事だった。
……普通騎士も行くもの……って言うか騎士だけで行かせるものなのだけど。
そして案の定私に魔法が飛んできた。
でも予想はできてたし、覚悟もできていたつもりだった。
(私の人生は、これで終わりなのね……)
不思議と、怖くはなかった。
だけど、あぁ
(一度くらい……愛されてみたかったな)
「おわ!」
少し間の抜けた声で、けれどしっかりとこちらを見据えたあの人が居た。
ギリギリだった。私の少し上に魔法がずらされた。
私は助かったのだ。
その事実を認識すると、途端に顔が赤くなり、心臓が高鳴る。
「わ、たし……私の事を……助けて……」
そんなわけない!
だって……今まで誰も……誰も助けてなんかくれなかった!
「貴方が無事で何よりです!」
体が震える……
(そうだ、この人と死のう)
私は数日後にフェンリルのもとへ向かうことになっている。
(最後くらい……ちょっとわがままでもいいよね)
そして、ミレーヌはカマーセに嘘をつき、カマーセをフェンリル討伐に連れていくことに成功した。
すこし短めにはなります
かませ犬は今日も勝つ ソルト塩 @tmgtmgtmg9999
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