第3話 初めて自覚した日


私は両親ともに共働きで、近くに祖父母も親戚もいなかったので保育園に預けられていました。

父も母も帰りは遅く、父も早く来れても五時半が通常でした。


冬夜も、そうだったんです。帰るのは五時過ぎ。

私の通っていた保育園はおやつを食べてから園庭で遊んでいるんですけど、五時前にはお部屋に入るんです。


でもその頃にはみんなほとんど帰っていて、冬夜とかくらいしか残っていなかったんですよ。


唐突ですけど、

まあ、私たちの保育園の頃って、スプーン曲げが流行ってた時期なんですよ。


覚えています?あれが流行ってテレビでも結構やってた時。


そんなある日です。


冬夜がスプーン曲げの話をしてきたんです。



「りあちゃん!スプーンまげってしってる?」


「しってる!テレビでやってるよね、ぐにゃってできるんでしょ?」


「できるようになったんだ、ねぇちゃんにおしえてもらった!」


「!すっごい。みしてみして!」



って言ったら、おままごと(外用)を箱からとってきて、


「みててね?」


《ぐにゃ》


って、スプーン曲ったんです!


「すごい!なんでできるの?」


とか、話していたんですけど、これ、保育園のなので、一応、


「もどさないとダメじゃない?」


って、二人とも気づいちゃったんですよ。


「とうやくん、スプーンってまげたらもどせるの?」


「できるとおもうよ、ねえちゃんにおしえてもらった、とおもう...」


「が、がんばって?」


っていう時にです。


「莉愛ちゃん、冬夜くん、お部屋入るよ~、来てね~?」


「「はーい」」


一応年長だったので、それにお片付け箱の目の前にいたので、もう片付けてると思ったんだと思います。その日、ちっちゃい子がいつもよりいたので。


「たいへん、とうやくん、はやくもどさなきゃ!」


「うん、がんばる!」


《ぐにゃ~ん》

《パキ》


はい、地獄の音ですね。


戻せたと持ったら、もどしたところから折れちゃいまして...


その先は内緒ですよ?


どう思います?


先生に怒られちゃいましたかね?


ㇷㇷㇷ、それは内緒です。


でも、これがあったから、ほかのみんなは知らない秘密ができたわけなのですが。


_____________________________________


実は、私は、スプーン曲げがいまだによくわかっていません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつかの春~どうしようもなく大好きな君に出会った物語~ @rionnnn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ