第68話 南条麗華 本妻への道
「あのですね…その、私は…」
「麗華、貴方だけよ? 理人の本妻の1人なのに夜の相手をしていないのは?」
「ですが、シャルナ様、私はまだ学生でして…そのですね…」
「あら麗華、貴方は我が国の子爵、れっきとした貴族です!前の世界は兎も角、今や1人前の大人…そしてジョブは勇者、学生ではありませんよ!」
「そうよ、貴方は私の家臣の一人で同じハーレムの仲間なのです!この際思い切って捨てちゃいましょう」
「マリアーヌ女王様にマリン王女様? 私にも心の準備という物があります…私のペースで…」
「麗華…我のハーレムの仲間はそんなヘタレじゃない筈だ!もし平和な世界じゃなければ、我と雌雄を決する殺しあいをした筈だ『勇者』の名が泣くぞ」
「そうですよ…処女なんて不名誉なもの、サッサと捨てて大人になりましょう?」
「麗華殿」
「麗華お姉ちゃん…こんなチャンスは本当はなかなか無いんだからね」
「「「「さぁさぁ」」」」
「それでね、麗華ちゃん、皆が協力するのと1人で頑張るのはどっちが良いかな?」
「え~と、皆って何でしょうか?」
「皆は皆よ、皆で理人と楽しむ前に麗華ちゃんの処女を捨てるお手伝いをしてあげるわ」
「1人で頑張ります…」
「そう? それじゃ今日は麗華ちゃんの貸し切りにしてあげるから頑張ってね」
「今日?」
「「「「「「「今日」」」」」」」
「少しは心の準備を…」
「「「「「「「駄目」」」」」」」
もう少し時間が欲しかったのに…
はぁ~
腹を括るしか無いのかな。
◆◆◆
夜になってしまった。
理人には話はしてあるから、もう行かない訳にはいかないわ。
大体、私がこの世界に残った理由は南条財閥という籠の鳥から逃げ出したかった。
そして、あの時の大樹の目…
あれは、幾らこの世界のせいだと解っていても『許せそうも無かった』
だから、残ったのよ。
今の理人は嫌いじゃない。
転移特典で凄く綺麗になった。
正直言えば凄く好みなんだけど…
早すぎるでしょう…
普通は、デートしたりして距離を詰めながら、ドキドキして手を握って…やがて震えながらキスをして…
もっと時間を掛けるのに…
それが、今日…
しかもいきなりの肉体関係…
はぁ~、残る覚悟をしたのは私。
こうなるのは薄々解っていた筈だわ…
あの時覚悟した…あの勇気を思い出してするしかないわ。
流石に裸は不味いですね。
あの時は、手持ちが無かったから、下着にブラウスを羽織って、はしたなくない範囲で整えたのよね。
だけど、今回は…なんなんでしょう…これ…
スケスケの下着にベビードール。
これでもピンクでまだ卑猥で無い奴なんて…これで行くしかないのか。
あの時と同じで入浴は長めに入って隅々まで綺麗にしました。
ハァ~今日はこれから理人に全てを捧げなくちゃいけません。
私は、学園一の美人でお嬢様。
誰にも負けない南条麗華。
だけど…相手が悪すぎる。
女王に王女…貴族のお嬢様にサキュバスの女王に元女騎士。
なんなのよこのランナップは…
この中でじゃ『お嬢様』なんてなんの価値も無い。
5人は私以上のお嬢様だしね…
はぁ~
私大丈夫なのでしょうか?
あれ程の美女や美少女を相手にしてきた理人…
私が相手で満足するのでしょうか…
はぁ、仕方ないですね…
これで行くしかありません…
私はもう、南条財閥のお嬢様じゃ無いのですからね。
トントントン
「理人、起きている…その来ちゃった…あはははっ」
何を言っているのでしょう?
今日、私が来ることは理人は知っていると言うのに…
こんな凄い格好で男の子の部屋を訪ねるなんて…凄く恥ずかしい。
ガチャ…ドアが開きました。
ああん!もう引き返せません。
◆◆◆
嫌なトラウマが思い出されます。
『なんだ…麗華じゃないか? まぁ良いや、取り敢えず入れよ』
私を蔑むような目。
『あのね…大樹…今迄我慢させてごめんね、今日は一緒に寝よう…それでね』
『なぁ麗華…俺達別れようぜ!』
◆◆◆
怖い…
体が震えてしまいます。
ガチャっ
「いらっしゃい、麗華さん!」
凄く優しそうな目。
あの時とは全然違います。
「こうして話すのは本当に久しぶりですね」
「そうだね」
うふふっ顔を真っ赤にして…
散々経験したのに、なんで目を逸らすのかな。
だけど、冷たさなんて全く無い。
優しくて可愛らしい。
それから、一杯昔の事を話しました。
何処にでもある学生同士の会話。
それだけ…
「えっ、私が理人を振った事があるの?」
「まぁ、あの時の麗華さんはモテモテだったから、目もあわせずに『却下』そう言われただけだけどね」
「そうだったのですね」
何気ない会話が本当に楽しい。
お話をするだけで心がドキドキします。
ただ、話すだけで時間は過ぎていきます。
「麗華さん、無理はしないで良いよ…また今度に」
多分、此処で逃げたら多分次も私は逃げてしまう。
「私は南条麗華です、逃げはありませんわ」
私は理人を押し倒し…馬乗りになった。
うふふ、驚いた顔、これが見たかったのです。
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