第9話 『頑張れ女の子』


此処は異世界なのかも知れないが…思っていたのと全然違う。


少なくとも『男』であれば、争いと無縁で暮らせる。


なんだか凄い世界だな。


まぁ良いや。


凄く楽しいから。


しかし、何故か友達になってからミムに会わないんだけど?


どうしたのかな?


ミムを少し街で探してみたら…居た。


「お~い!ミム」


「あっ、お兄ちゃん…」


ミムは俺の顔を見ると走って逃げようとした。


「おい、ミムどうしたんだ」


まだミムは子供だ、俺が走れば追いつける。


追いついた俺はミムの手を掴んだ。


「お兄ちゃん…離して…うっうっグスッ…うわぁぁぁぁ~ん!」


ミムは周りも気にしないで大きな声で泣き始めた。


「おい…」



「なにアレ! 男に構って貰って泣いて、なに様のつもりなのかしら」


「あ~あ薄汚いガキが男の前で泣いて…死ねばよいのに」


「男を困らすなんて馬鹿じゃないの?」


可愛い子が泣いて居るのに辛辣な声しか聞こえて来ない。


「あの…なんで泣くんだよ…俺の事が嫌いにでもなったのか?」


「ううん…ヒクッグスグス…うっうっ…だって折角お兄ちゃんと友達になれたのに…お金が無いから会えないんだもん…ミム貧乏だからうわぁぁぁぁーーん」


暫くミムが泣き止む迄待って話がようやく聞けた。


ミムの話しでは、この世界では『女は男に貢いでなんぼ』そういう考えが強いそうだ。


デート代は全部女が払うのは当たり前。


しかも、デートして貰ったら謝礼金を払うのがマナーなんだそうだ。


まして『友達』にまでなったら大体銀貨3枚(約3万円)を1回のデートで払うのが相場らしい。


「そう? 俺はミムと話すのは楽しいから謝礼金は要らないよ!奢るのだってその辺の屋台で充分だよ」


お金には困ってない。


『デート代も俺が出す』それをいうとミムを傷つけそうだから、それは言わなかった。


「ほんとう? それならミムでも大丈夫かな? ミム頑張って銀貨1枚溜まったから…デートしてくれる?」


「喜んで」


お金を使わせるのも悪いし、俺が出すのも不味そうだったので…屋台の串焼きとジュースを買って貰い…その辺の広場でおしゃべりをした。


気がつくと夕方になっていた。


「バイバイお兄ちゃん」


「うん、バイバイ」


ただ、話をしていただけでミムは嬉しそうだ。


『頑張れ女の子』


頭の中にそんな言葉が浮かんだ。


この世界、男には天国だけど…女の子は辛いな。



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