第6話 ヒロイン登場
しかし、至れり尽くせりだな。
男だからって高級宿屋みたいな施設が食費も含んで無料なんて知らなかった。
最初、俺は宿屋に泊まっていたのだが、
「男性が泊った場合、色々と責任問題が生じるのよ!だから、そろそろ国営の男性保護施設に行くか、もう少し高級な宿屋に行って貰えるかな?」
という様な事があって俺は男性保護施設に行き、そこで暮らしている。
家賃が無料で食事も頼めば無料でルームサービスが届く。
その代り、部屋にはバインダーがあって、それを見る事が義務付けられている。
このバインダーには女性のデーターや住まいの場所が書いてあって、それを見て、見た証拠として丸をつけないとならない。
前の世界の出会いを求める施設に近い。
此処は本当に異世界なのか?
なんだか中世に近い生活だが、ファンタジー感が全くない。
ただ、何もしないのも嫌なので、一応俺は『冒険者』をしている。
◆◆◆
「理人さん、依頼が沢山入っていますよ! 今日は5件です。お好きな物を選んでください」
「はい…」
冒険者をしているのにファンタジー感が無いのかって?
『全くない』
だって、依頼の殆どが…
『一緒に買い物に付き合って欲しい』
『私達が守るから薬草の採取を手伝って欲しい』
『最近、疲れているからマッサージして欲しい』
『手料理食べさせて』
『お話をして欲しい』
こんな感じなんだ。
これじゃ、冒険者とは言えない気がする。
「もう少し、その冒険者らしい仕事はありませんか?」
「はははっ、美少年に危ない仕事をやらせるような女は冒険者には居ないぞ! そうだよな!」
「確かにそうですが…ギルマスがなんで此処にいるんですか?」
「いやぁ~噂の美少年、理人くんを見にきたのさぁ~、何だったら、このギルドの受付やらない? 給料は弾むから」
「考えさせて下さい」
「そう?良い返事を待っているよ」
そういうと笑いながらギルマスは去っていった。
しかし、本当にこの世界の男は引き篭もりなんだな。
王城の中では見た物の、あそこを出てから今迄誰も見ていない。
それじゃ5つ全部受けます。
「流石は理人くん、凄いね」
「はははっ…まぁね」
半分意地で仕事をしているが、ほぼ女の子と遊んでいるだけでの毎日。
魔王討伐、そう言う名目で呼ばれた筈なのに…良いのかな?
まぁやらして貰えないんだから仕方がないよな。
◆◆◆
今日も依頼をこなして報酬を貰った。
あの内容で5件併せて金貨1枚…男ってだけで凄く優遇されている気がする。
それはそうと…この世界の女性は気のせいか可愛い子や美人が多い気がする。
女の子を上中下で分けちゃいけないけど…この世界には中の上位の女の子しか見た事が無い。
多分、気のせいじゃないと思う。
◆◆◆
報酬を貰い冒険者ギルドを後にしようとした瞬間…
そこだけ時が止まったような気がした。
長い茶髪の線が細い美女。
この世界には綺麗な女性が多いけど、彼女は別格。
漫画の冷酷残酷な美しい宇宙海賊、女宇宙海賊メーダルにかなり似ている気がする。
「うん? 少年、そう見ないでくれるか? 私だってこれでも女なんだ…多少は傷つくんだ」
これ程の美人は前の世界の芸能人ですら見た事が無い。
まるで絵画か漫画のヒロインが、その世界から飛び出した。
そう思えてならない。
話をしないと…
「いえ、余りに綺麗なのでつい見惚れてしまいました…すみません」
「はははっ、気を使う必要は無い! 女だてらに顔にこんな傷があるんだ、自分の身の程はわきまえている…気を使う必要は無い」
確かに右から左に斬られた傷が顔にある。
だが、それと同じ様な傷は女宇宙海賊メーダルにもある。
俺の好きなキャラクターは医者も海賊も侍も皆、顔に傷がある。
だから気にならない。
なんて言えば良いんだ。
誤解されたままじゃ嫌だな。
「その傷が良いんじゃですか! その傷がどうして出来たのかは解らない。だけど、その傷は逃げずに戦ったからこその傷だと思うんです…上手く言えませんが、その傷も素敵です」
「本当にそう思う? まぁ褒められて嫌な気はしないよ! 良かったら一杯、いや幾らでも奢るから飲まないか?」
「是非」
これ程の美女が誘ってくれる。
凄いなこの世界。
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