第5話 ミム


「あの…お兄ちゃん…その私と本当にお話ししてくれるの?」


「うん…この世界について色々教えて貰いたいんだけど?」


「ミムはお金も持っていないし、その何もしてあげられないけど良いの?」


この世界は、まるで男にとって夢の様な世界だ。


ただ、女性が表面上は淑女的なのだが、中身がまるで獣みたいなのが少し困る。


繕ってはいるが、そうだな、中身は『ヤリタイ盛りの男子校生』に近いのかも知れない。


凄く優しいが…下心がみえみえなんだよな。


だから、年下の少女に聞く事にした。


流石に、この年齢の少女なら、そう言う下心は薄い気がする。


「別になにかしてくれなくて良いから、お話しない?色々この世界について教えてくれるかな?」


「本当?!えへへミム嬉しいな! 何でも聞いてお兄ちゃん!」


凄く可愛らしい子だ。


どうせ、話しするなら可愛いにこした事はない。


この世界に来てまだ数週間、そしてその大半をお城で過ごした俺よりは街で暮らしているんだ、色々詳しい筈だ。


「なんで、この世界の男って、余り居ないのかな?」


「なんだ、そんな事?『この世界には真面な男が居ない』からだよ!う~んとね」


ミムの話だと、この世界で大昔に魔族と人族で大きな戦争が起きたそうだ。


その時の戦いで人族も魔族も滅びる寸前まで追い込まれた。


どうにか滅亡を逃れた人族はその後、大きな問題に直面する。


真面な男は魔族との戦争で多くは死に、残った男は『戦争に参加できなかった男』つまりは体になんだかの不具合がある男達ばかり…そこからの復興のスタートらしい。


「それじゃ、この世界の男性は…」


「う~んとね…やはり元が体に不具合のある男性の子孫だから、体の調子が悪い人が多いんだよね! ただでさえ男が生まれる確率は何故か低いのに、生まれて来ても著しく体が弱く、生殖能力の低い男性ばかりだし、子供の頃に死んじゃう人も少なくはないんだよ」


「体が弱いのは解るけど、生殖能力はどうしてなのかな?」


「ミムも良く解らないけど、魔族との戦いで魔王が使った呪いのなかに人間の繁殖能力を劣化させる呪いがあった。なんて話もあるよ?」


「どうして…」


「う~んとね『人間の怖さは数の暴力にある』そう魔族の幹部が考えたからだって、だからその時の魔王がそういう呪いを掛けたって話だけど、これは嘘みたい」


「嘘?!」


「うん…だって、そんな都合の良い呪いなんて普通は無いよね? 多分、別にちゃんとした原因があると思うけど『生殖能力が低い』っていうの男の子にとって、凄く屈辱的みたいだから『本当は体が悪くて、子供ができにくい』というのを呪いって事にしたみたい。まぁ口にしないけど皆嘘なのは知っているよ」


「だけど、それじゃ男の子が余り生まれなくて女の子が沢山産まれる理由と、女の子が問題なく健康なのが解らないな」


「うん…それは理由が解らないみたいだよ! 昔の異世界人の人が遺伝子とかDNAとか言っていたらしいけど、本当の所は解らないんだって…だけど、どんどん酷くなっているんだよ!昔は1対3位だったのに今は1対5なんだもん」


「そう、なんだ…ありがとう」


「どう致しまして…それでね…お兄ちゃん、はい…」


「これって、連絡先?」


「うん…駄目かな?!」


この子、緑髪で昔の漫画のヒロインみたいに可愛いんだよな。


流石に子供に手を出したりしないけど…


1980年代の霊夢とかウミとか…現実に居たらこんな感じだな。


「ミムちゃんは可愛いからボーイフレンド位居るでしょう?」


「ミムは貧乏だから…居ないもん! 男の人と話すのも…その初めてなんだもん…」


こう上目使いで泣きそうな顔をされると…駄目だな。


「良いよ!これ受け取るよ、友達になってあげれば良いの?」


どう見ても10才から14才位。


ロリコンなら生唾ものの美少女だ。


手を出すのは兎も角、友達位なら、別に良いよな。


「うん…ありがとう! 友達になってくれるんだ! それじゃ衛兵所に行こうか?」


衛兵所? まさか未成年に手を出したから『捕まるのか』?


まぁ違うよな。


「いや、衛兵の詰所に行くのは…」


なんか交番に行くみたいで嫌だな。


「嫌なの!うぐっヒクッすん…」


流石に泣かれるのは辛い。


「解ったよ、行くよ」


俺はどうなるんだ…なにかあるのか?


◆◆◆


衛兵所まで来た。


未成年に手をだしたから、俺は捕まってしまうのか…


まぁ違うと思うけど、警察に連れて来られたみたいで凄く緊張する。


「どうしたの? そんな青い顔して…嫌なの…ミムが貧乏だから…」


涙を溜めた目で見られたら、何をされるか解らないけど

嫌と言えなくなるから…困る


訳が解らないが…


「いや…そんな事無いよ」


それしか言えない。


「良かったぁ! ありがとう…このお兄ちゃんと『友達』になったから申請お願いします」


急にミムは笑顔になり衛兵に声を掛けた。


「えっ…あのこんなスラムに居るようなガキと友達になったんですか? 真面目に…こんな美少年なのに…」


友達になるだけなのに、なにかあるのかな。


「まぁ一応…」


「そうですか、間違いじゃないんですね、それじゃ冒険者証等の身分証明書をお願い致します」


「はい」


「…はい」


衛兵は冒険者証に何やら書き込みをして返してよこした。


「これで、2人は友達です…以上です ハァ~」


なんで溜息をつくんだ。


まぁ良いや。


◆◆◆


「あの…勢いで友達になっちゃったけど、友達ってなにかあるの?」


「うん『友達』って言うのは仲良しって事なんだよ? 友達になるとね、お兄ちゃんからじゃ無くてミムからも話かけられるの、軽いスキンシップ、手を握る位なら犯罪にならなくなるんだよ」


「もしかしてだけど…女の子から話しかけるのって何かペナルティがあったりするの?」


「う~ん…そんなに厳しくは無いけど『友達』でも無い男性に何回も話しかけるのはマナー違反だし、周りの女性から衛兵に連絡がいったら『付き纏い行為扱い』で注意されちゃったりするんだ!だけど『友達』になっていたら、男性から訴えられない限り大丈夫なんだよ…えへへありがとう! お兄ちゃん」


「そうなんだ…」


まぁ、この程度で喜んでくれるなら良いか…


「うん、それじゃありがとうね!」


ミムは手をブンブン振りながら笑顔で去っていった。


冒険者証を胸で抱えながら。


「転んじゃうよ」


「転んでも良いもん」


なんか騙された気がしないでもないけど。


良いか…可愛いし。






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