こちら青春超能力者お悩み相談部
@gakukubota
第1話 我ら青春超能力者お悩み相談部
誰もが夢見る高校生活。毎日がキラキラしていて絶対に飽きることは無く、朝から晩まで部活と勉強と遊びに全神経を注いで、限りある時間を過ごす。
そんな日々を人はしばしば「青春」と呼ぶ。
この物語はそんな青春という「病」に犯された病人達の青春ラブストーリーだ。
「ちょっと!ちゃんと話聞いてるの!?」
「へ?」
「だから!私たちの部活がどうすればもっと活発になるのか案を出せって言ってるの!」
「あぁ……。すまん、考える。」
俺の名前は千葉俊介。私立大広高校の2年で、青春超能力者お悩み相談部の副部長。もちろん好き好んでこんな謎めいた部活に入っている訳では無い。
「全く!10秒以内に考えなさい!」
目の前でポニーテールをたなびかせながら、喚いている彼女は東麻衣。同じく2年で、青春超能力者お悩み相談部の部長様だ。
「何も考えてなかった俊介が10秒でいい案を出せるわけが無い。俊介の意見は無視すべき。」
「いつも通りの合理的で冷徹な判断だな……。」
そして、この冷たい女が俺の幼馴染で同級生の永野凛。ちなみに、以上3名が部員全員である。去年は3年の先輩もいたんだが、引退して今年からこの3人だけになってしまった。
「はあ……。とりあえず部員をあと2人集めないとこの部活は廃部になっちゃうでしょ?だから真面目に考えなさいよ。」
そう、うちの高校では校則で部員が5人以上いないと部として存続ができない。要するに廃部の危機ってやつだ。それにしてももう5月も中頃だっていうのに新入部員が1人も来ないとは……。
「なぁ、やっぱり新入生歓迎会のアレがまずかったんじゃないか?」
「なによ、私の演説が悪かったって言うの!?」
「いや、あんな涼○ハルヒみたいに『ただの人間には興味ありません!』とか言ってたら来るもんもこないだろ。」
「それは……みんな知ってると思ってて……。」
「10年前のアニメだぞ。」
「正確には18年前。20年前と言った方がいい。」
「げ!もうそんなに前なのか?」
てっきり8年前くらいだと思ってた。時代の流れには逆らえんな……。
「わ、わかったわよ……。それはまぁ悪かったけど、とりあえず今はどうにかしないとでしょ?」
そう、こんなにも俺達(主に1人)が焦っているのには理由がある。この学校の部活動は1学期末に活動報告会があり、その日までに部員を集めなければ2学期から活動停止になってしまうのだ。
「うーん……。」
さて、考えているフリがバレないうちに、俺たちがこの部活で何をしているか、そろそろ説明しておこう。
近年、特に青春という言葉が流行りだした頃、全国の高校生を中心に奇妙な能力が備わる事例が起こった。人によってその能力は様々らしいが、詳しくはわからない。分かっているのは、思春期に起こるということくらいで、実際のところ謎が多い病気だ。その病気の人をサポートするという名目で我ら、青春超能力者お悩み相談部は活動している。
「結構やれることはやったはずなのよね……。」
これに関しては、本当にそうだ。既に手は結構打った。ポスターも貼ったしクラスで勧誘もしている。これで来なかったら本当にみんな興味が無いんだろう。それとあと……。
「やっぱりみんな人のプライベートな所には触れたくないんだろう。」
今でこそ思春期性特別鬱病とか、思春期青年期性精神疾患とか呼ばれているが、少し前までは病名もつかないようなマイナーなものだったのだ。とある事件が起きてから、急激にこの病気は有名になり、今の若者でも名前くらいは聞いたことがあるのではないか。
「そもそも正式には青春超能力者とは呼ばない。」
「それは!みんなが超能力みたいな力をもってるからよ!そっちの方がかっこいいじゃない。」
「余計に分かりにくくなってると思うんだが……。」
こんな感じで無計画に設立された部活に俺がなんで入っているか、この話はまたいつかするとしよう。
「じゃあ俊介!校庭にでっかく暗号を書いて気を引くわよ!」
「だからそのネタは伝わらねぇって……。」
そんなこんなで、また今日も部活の時間が終わる。
……はずだった。
「あの、お悩み相談室ってここですか?」
「へ……?」
俺の平穏で平凡な学校生活は今まさに崩れようとしていた。
こちら青春超能力者お悩み相談部 @gakukubota
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