75‐2 重なり合う二人
〔多〕「井原姉妹を両方下げて、フィクソ(DF)をワントップのタワーに変えるとはな」
餌をフィクソ(DF)に入れ、今井を
〔長〕「あれ、交代した女の子。かなりのアスリート系なんだ。これは誤算」
〔多〕「参ったな。
〔井〕「俺が今の所出来るのはゴレイロ(GK)だけですが」
試合未経験の井上が念を押す。
〔多〕「
その言葉に飛島がペンを動かす手を止めた。
〔飛〕「下野君、みんなで出来る最後の試合だから全部出るって」
〔多〕「元日本代表の
〔飛〕「そんな」
飛島の曇り顔に関わらず、多良橋は
〔下〕「何でっすか俺めっちゃ頑張ったし。父ちゃんも母ちゃんもあーちゃんも来たのに」
〔多〕「第二試合以降はスーパーサブで出す」
〔下〕「俺全部の試合で活躍したいっす。今日はまだ点取ってないし」
〔多〕「だから第二試合以降で点を取れって。桂先生が
〔下〕「本当っすか!」
多良橋の言葉に、
※※※
試合終了まで残り四分弱。
落研ファイブっが三対一での勝利を確信した瞬間、
〔多〕「
慣れないフィクソ(DF)で太ももを痛めた
〔多〕「
井原れんをワントップのピヴォに置くと、残り三分となった『かしわ台コケッコー』が前がかりに攻めてきた。
〔仏〕「井上、ロングフィード」
井上がバスケ仕込みのロングスローを放つも、中盤で拾われる。
〔仏〕「今井君、走って」
〔今〕「ちょ、もう無理かも」
さすが野球部アルプス席在籍らしく、スタミナ不足の今井であった。
〔大〕「れんちゃん、今だっ!」
今井とかみ合わない仏像がもたもたしているすきに、大和が仏像の背後にロングボールを蹴りこんだ。
〔仏〕「井上、蹴り出せっ」
完全に後れを取った仏像がコーチングするも、ボールに向かった井上とれんの体がぶつかって――。
〔うい〕「れんちゃん! れんちゃん!」
スライディングしてきた仏像の腹の上に崩れ落ちたれんは、ぴくりとも動かなかった。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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