59-1 真打登場
〔う〕「ちょいと邪魔するよ。おや今日はずいぶん
みつるの後ろから
その後ろから
〔三〕「本物の
当代きっての人気
〔う〕「落語の先生が欲しいんだって」
〔三〕「まさかそれで
〔う〕「馬鹿言っちゃいけねえよ若様。当代きっての売れっ子落語家が部活の先生になんて、どれだけ銭を積んでもなってくれるもんか」
〔米〕「この間は
〔三〕「
〔多〕「ああ、あそこの」
〔米〕「伯父夫婦から先日話を聞きましてね。うち身師匠と
言うなり、
〔米〕「『鱈もどき』を私も食べに行ったのですが、あれはあんまりだ。病院に連れて行きましたら、
〔多〕「ご病気だったとは。もう良くなられたので」
〔米〕「様子見ですね。食堂は昔から作っているメニューだけで、伯母が何とかやってはいるのですが」
〔多〕「それは大変でした。そのような事情があるのでしたら、なおさらこちらを受け取る訳には」
大人らしい小競り合いで、のし袋が
〔米〕「いえいえ、伯父夫婦が皆さんの事をひどく気に病んでいまして。どうぞ伯父の気持ちだと思って」
ついにのし袋を受け取った
※※※
〔米〕「うちの弟子筋にも何人か指導員がおりまして。先生の異動や退職などで、同じようにお困りの学校は多いのです」
〔多〕「私共はあくまで楽しく落語や演芸に向き合うスタンスなので、大会に出る気はないのです。そのようなケースでも受けてはいただけるのでしょうか」
〔米〕「その辺りは
御米師匠は、柔和な笑みを一瞬消す。
〔多〕「なるほど。ありがとうございます。よく考えてみましょう」
〔う〕「ふむ、落語はしきたりが厳しいからねえ。それはそうと、そこの新入り君はまだにぎわい座に来ちゃいないじゃねえか。若様にしちゃ珍しい」
〔三〕「こいつは色々と訳アリなんだよ」
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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