Brand new days
45 伝説のハゲタカ
さて、お気づきの向きもあろうが、シャモと共に
時は土曜日午後四時へとさかのぼる。
※※※
初試合を終えて帰宅した仏像がマンションの鍵を開けようとすると、鍵はすでに開いていた。
〔仏〕「えっ、嘘っ。俺鍵掛けて家出たよな。何で、やばいやばい」
非常事態だ。
仏像が松尾に夕食を誘われ、
それは、仏像の家庭の事情にある。
両親の離婚後は、仕事の都合で土日祝日も含めてほぼ午前様な父親との二人暮らし。
そして現在時刻は午後四時。
つまり目の前の光景は――。
〔仏〕「マジやべえ」
最大限の
〔仏〕「父さん、帰ったら鍵ぐらいちゃんと掛けてよ」
脱力しながらリビングに入った仏像が目にしたのは、段ボールに寄りかかって
〔仏父〕「強制アーリーリタイアです。平たく言うと、無職です」
〔仏〕「いきなり首かよ。外資系はこれだから」
〔仏父〕「五郎君。君の留学費用も含めた学費の口座と生活用口座はここにあるから、安心して。ダディは普通のオジサンに戻りたい。ハゲタカ(※)を卒業して、四国にお
〔仏〕「ちょっとばかりお
〔仏父〕「いいかい五郎君。君の血肉はハゲタカがせっせと運んできた
〔仏〕「Never!(ねえよ)」
〔仏父〕「えっ。だって五郎君は
〔仏〕「なりません。俺は父さんみたいに朝も昼も晩も分からない上に、いきなり路頭に放り出されるような生き方はしないと決めてるの」
〔仏父〕「でも雇われ人コースの中じゃ一番
仏像の父は
〔仏〕「でかいのやっちゃったの。金融危機引き起こすレベルの」
〔仏父〕「いや、それはない。ただ業界紙にはデカデカとダディの
〔仏〕「即刻首になるレベルって何やった。話していいなら教えて」
その言葉に、仏像の父はぽいと業界紙を仏像に投げ渡した。
〔仏〕「【敵対的TOBのmbo戦略に大誤算。
経営陣による買収(mbo)の絵図を描いたが、H&T側に逆手に取られたとね。それで、経営陣側に入れ知恵をしたチームのトップが
仏像はざっと記事を読むと、業界紙をばさりと置いた。
〔仏父〕「
生返事で記事を読んでいくと、末尾近くにH&Tキャピタルマネジメントについての説明書きがあった。
〔仏〕「H&Tキャピタルマネジメントは、東南アジアおよびオセアニアでの案件を中心に数々のバイアウト(買収)を手掛け、市場関係者からの熱視線を浴びている。なお本紙十六面に
これってまさか、いや、まさかじゃなくて――。
仏像は十六面にあると言う『
〔仏〕「狭っ。世間狭っ」
自室の仏像コレクションからお気に入りの│
〔仏〕「マフィアにアパートの泥棒のくだりなんて、まんま
仏像が一人ベッドの上で│
〔仏父〕「ダディは夏休み中ここでのんびり自分と向き合いながら、ハゲタカから普通のオジサンに戻る準備をしてるから。お金はあるから、五郎君は何にも心配しなくていいからね」
そう言う事じゃねえんだよ、いや待てずっとあいつが家にいるなら俺が飯作るのか。えっ嫌だあいつずっと家にいんの困るよ、亭主元気で留守がいいって言うじゃん――。
仏像はパニックの吐き出し口を見つけられないまま、
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※ハゲタカ 企業買収ファンドの一部手法/組織にたいする批判的なニュアンスの込められた呼称。
本作では外資系投資会社のCIO(最高投資責任者)であった
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