普通の恋がしたい件
40 さよならは突然に
〔シ〕「あのさ、しほりちゃん。しほりちゃんは結局俺にどうしてほしいの」
しほりはうつむいたままである。
〔シ〕「『友達から』って言ったよね。それでうなずいてくれたよね」
しほりの反応は無い。
〔シ〕「友達って言うのはさ、バカみたいな話して笑ったり、時々怒ったりからかいあったり。そういう感じだと俺は思ってる。それに友達同士は、誰かを独り占めしようとはしないよ」
しほりは感情の無い顔で、立ち上がるシャモを見つめる。
〔シ〕「俺、疲れたわ。ごめん。ちょっと距離を置きたい」
しほりがはじかれたようにシャモに抱き着いた。
〔シ〕「ちょっと、止めてよ。俺、そう言うのが嫌だって言ってるの」
シャモは語気を荒げるとしほりを振りほどく。
〔熊〕「おいおい兄ちゃん、女の子に何しやがるんだ」
〔シ〕「誤解です。これはそうじゃなくて、あ、熊五郎さん」
シード扱いで時間まで外で調整をしていた『
※※※
〔権〕「あれが
〔清〕「白蛇の塚守りだろ」
トラック野郎の
〔権〕「あのお嬢さんの親父さんも、兄ちゃんみたいな見初められ方で結婚したのよ」
権助が
〔権〕「気が付いたら一家そろって
〔清〕「ちょっと普通のお宅じゃないわなあ。財力もけたはずれだし。藤巻家の力は白蛇の塚守りのたまものって噂だあね」
一回もそんな話は聞いたことが無いとシャモは首をひねる。
〔シ〕「彼女から変なシールを貼られたんですよ。後輩からはナノチップじゃないかって言われて。風呂でふやかそうとしても全然はがれてくれないし」
〔八〕「こりゃウチの
八五郎がシャモの腕の
〔熊〕「肉を斬らせて骨を断つ。いっそ肉ごとシールを
〔シ〕「無理無理むりっ。暴力反対! 恐ろしい事を言わんでくださいよ」
熊五郎なら本当にやりかねないとシャモが震えていると、つと熊五郎が真顔になった。
〔熊〕「つまり
〔シ〕「好き嫌い以前に、どんな子か全く分からないんです。出来る事なら二人が出会う前まで時を巻き戻したいぐらいです。それに」
〔権〕「記憶が飛んじまってるんだろ。
お嬢さんはまだ白蛇の力を
※※※
〔餌〕「シャモさん、もう帰りますよ。今日は
熊五郎達と別れて会場に戻ろうとしたシャモに、シャモの荷物を持った
〔シ〕「そうだけど、しほりちゃんに距離を置きたいって言ったからもう
淡い期待を抱きつつ、シャモは
〔松〕「ええっ。シャモさんどうしてまた急に」
後ろを歩いていた松尾が、思わず二人の会話に口を挟む。
まあ、色々限界が来てたのよとシャモがつぶやくと、
〔餌〕「注目ーっ。これより『味の
味の
〔シ〕「何にも覚えてないのに勝手に養子になる話が進んでて、親に売られる勢いで藤巻家に出されて。しかも
〔餌〕「大富豪の椅子と婿入り支度金をゲット。おめでたいじゃないですか。それに
白蛇の皮を財布に入れると金運アップになるってばあちゃんが言ってた、と
〔仏〕「めでたいじゃねえか。シャモは金の
〔シ〕「一つもおめでたくねえよ。俺は本当に何にも覚えてないの。記憶の無い間の俺が何をしてるかと思うと」
〔餌〕「
にやにやと軽口を叩く餌に、シャモは冗談じゃねえんだよと叫んだ。
〔シ〕「それに、俺がしほりちゃんとの事を全然覚えていないのを知ったらショックだろ。そんな男が
〔餌〕「でも清八さんたち曰く、『白蛇の塚守り』なんですよね。あーっ、分かった」
餌が、通行人が振り返るほどの大声を出した。
〔餌〕「シャモさんは『お百度参り』こと藤巻しほりの本体である白蛇と
〔シ〕「白蛇と交尾――」
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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