かなりヤバい彼女
27 かなりヤバい彼女
親子ほどに年の離れた後輩たちに、『
〔服〕「シャモさん、あの後結局『お百度参り』さんとどうなったんすか」
部活を終えて下校途中の服部がたずねると、シャモは無言で二の腕のタトゥシールを指さした。
〔服〕「何ですかそれ」
〔仏〕「
〔服〕「だったらカップル成立って事ですね。ファミレスでその話で持ちきりだったんすよ」
〔仏〕「服部もあの後エロカナ軍団と飯食いに行ったんだ」
仏像の問いに服部はモアイのような目を細めた。
どうやら女子との語らいに手ごたえを感じたらしい。
〔三〕「でもやっぱり変な女だよな。ばあちゃんの
〔下〕「お
いやそもそもそんなものに頼ろうとする根性からして、と仏像が鼻で笑う。
〔シ〕「付き合ってる訳じゃねえよ。まあ一応、お友達からって事で話はつけたんだけど」
〔餌〕「シャモさんの
〔シ〕「仕方がないだろ。お前らが散々『お百度参り』だの『生霊』だの『六条しをん』だの言って脅かすから」
自他ともに認める
ぶつぶつと漏らすシャモをからかいながら、一同は通用口へとたどり着いた。
〔三〕「あれ、何だあの白いリムジン。理事長でも来たのか」
〔シ〕「あのジジイには似合わねえよ。あんな長いリムジンはハリウッドとかセレブショーでしか見た事がねえ」
〔仏〕「まさか、
無類の
〔松〕「千景おばさんの趣味ではないですね」
松尾は即答で否定した。
どこぞの坊ちゃんが高校の下見にでも来たのかと結論付けて、皆で車の脇を通ろうとしたその時――。
〔男〕「
白いリムジンの後部座席が開けられて、
〔シ〕「えっ、確かに俺だけど。え、どういう事。あんた誰」
両眼をせわしなく左右に動かしたシャモの腕に、後部座席の奥から白魚のような指が伸びる。
〔シ〕「し、し、しほりちゃん?! あっー!」
それが一同が最後に聞いたシャモの言葉。
バタンと音を立てて扉が閉まると同時にリムジンが音を立てて走り去った。
※※※
〔父〕「おい
〔シ〕「何で父ちゃんが。下船は七月末のはずだろ」
一等航海士である父の姿を認めながら、まどろみから目覚めたシャモはゆっくりと自分が置かれた状況を確認する。
見慣れたヘッドセットに配信機材が真新しいシステムラックに整然と置かれ、年季の入ったふすまは真新しい木製引き戸に変わっている。
〔シ〕「これ、俺の部屋だよね」
〔父〕「お前を養子先に預けている間に突貫工事をしてやった」
〔シ〕「養子先?!」
〔父〕「今更無かったことには出来ねえぞ。ほら」
〔シ〕「へっ、退職したの。嘘だろ父ちゃん、最近転職したばっかじゃん」
父親はひらひらと一枚の紙をシャモの目の前に差し出した。
〔父〕「それもこれも藤巻の
かかかっと海の男らしい白い歯を見せて笑うと、階下から『おほほ』と営業用の笑い声。
〔シ〕「誰、お客さん。いや、俺、あのな。えっ、しほりちゃんが何で」
氷のような白魚の指からは想像もつかない怪力でしほりにリムジンに乗せられた所で記憶がぷっつり途切れているシャモは、混乱を隠す事も無く父を見た。
※※※
一方こちらはシャモを見送った面々。
シャモを乗せた白いリムジンが走り去ると同時にはじかれたように関係各所にスマホで通報をした一同は、きつねにつままれたような顔で改札口を通った。
〔餌〕「
〔三〕「シャモの母ちゃんが
〔餌〕「あー、こんな大事な時に。エロカナから呼び出しかかった」
スマホをちらりと見た餌が、げっそりした顔でため息をつく。
〔仏〕「じゃあまた横浜で降りるの。いっそ変態同士で付き合えばいいじゃん」
〔餌〕「絶対断る。奴はやることがエグイんだよ。平気で人を実験台にしようとするから」
〔仏〕「なあそれって小学校時代、それとも今」
〔餌〕「さすがに昔の話。今同じ事やろうとしたら締め落とす」
会いたくないけど多分『お百度参り』の話だから聞くしかないと、
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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