26‐3 湘南の激闘
『ゴール! ゴール! ゴーーールっ! 決めたのはこの男。『奥座敷オールドベアーズ』不動のエース 樫村熊五郎七十七歳! 『落研ファイブっ』下野広小路が蹴り出したボールをスティールからの、高橋八五郎に預けて最後はヘディング。泥臭い、実に泥臭い魂の同点ゴーーーールっ』
熊五郎の熱狂的なファンである青柳は、興奮を抑えきれず口角泡を飛ばしてしゃべり倒す。
解説役の本郷と大神も、あまりのテンションに引き気味だ。
「
多良橋が手を叩きながら指示を出す。だがその一分後には、熊五郎は芋名人の八五郎との息の合ったパス交換でもう一点をもぎ取った。
『第二ピリオド残り時間は手元の時計で四分を切りました。解説の大神さん、本郷さん。第二ピリオドのわずか二分間で一気に試合が動きました』
『『落研ファイブっ』にもまだまだ逆転のチャンスがある。特に『奥座敷オールドベアーズ』の控え二人は安定感が無い。若さと経験不足がもろに出ているね』
大神が指摘したと同時に、フィクソ(DF)とゴレイロ(GK)に入っていた応援部員が泉清八および遠藤権助と再交代。
『『奥座敷オールドベアーズ』側は守備固めに動いた。となれば、『落研ファイブっ』はロングボール多用で
解説通り、山下が熊五郎とのポジショニングを上手く調整しながら抑えている間に、ゴレイロ(GK)
「絞れっ!」
「それを待ってた」
熊五郎の叫びを待っていたかのように、深くサイドをえぐった
サッカー部同士阿吽の呼吸で、中央を走り込んできたフィクソ(DF)山下が同点弾を叩き込んだ。
「ブラボー!」
多良橋が両手を天に突き上げる。
『残り一分で劇的な同点弾! 『落研ファイブっ』|フィクソ(DF)山下の豪快なランニングシュートっ。これで三対三の振り出しに』
「上がれえええっつ!」
残り一分を切った所での同点弾に、熊五郎はメンバーのポジションを上げさせた。
『さあ残り十秒となりました。あっとここでっ。何とここで痛恨のPK。『落研ファイブっ』劇的な同点弾を上げた助っ人山下。何とここでPKを取られました』
試合時間残り十秒を切った所で吹かれた笛に、
『オーバーヘッドシュートの態勢に入った樫村熊五郎選手に触れてしまいました。これはPKとなりますね』
『今のチャージはグラウンドサッカーに
解説の本郷と大神も見守る中、
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※JFAのビーチサッカー競技規則2021/2022を参考にいたしました。
※2025/5/2「湘南の激闘 終幕」より改題・分割
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