74 悪目立ち
【第一試合前 午前八時三十分】
〔仏父〕『五郎君ファイトだおーっ』
〔ピーマン研〕『頑張るおーっ。えいえいおーっ。でもかしわ台コケッコーも
『日吉大学ピーマン研究会』のOBだけに、日吉大学と聞くとどうしても肩入れしたくなるらしい。
〔仏父〕『それはダメだお。今日は五郎君を応援するんだお』
ハイテンションで飛ばしまくる父とピーマン研究会の姿は完全に悪目立ちだ。
〔井〕「
遠くからでも目立つ色物軍団に、仏像とは中学からの付き合いである井上が顔をわずかにしかめた。
〔仏〕「
〔仏父〕『五郎くーん! かっこいいおおおおおお』
〔仏〕「頼む、もう黙れ……」
仏像は穴があったらこじ開けてでも入りたいと思いながら小さくなっていた。
一方、ピーマン研究会を至近距離で見る
〔三元母〕「
〔三〕「どでかい金を動かす人たちだから、あれぐらい頭がねじ切れてなきゃ務まらねえよ。マスクメロンだか何だかって名前のアメリカ人も、あんな感じじゃん」
〔餌母〕「うちの息子がいつもごちそうになってばかりで。本当にありがとうございます」
〔三元母〕「まあこんなに気を使わなくても良いのに。うちの母は、たろちゃんたろちゃん孫が増えたって大喜びですよ。
〔餌母〕「まあこの暑い中を。
【音楽コンクール――通称生き地獄――ファイナル/午前八時四十分】
〔色〕「松田松尾君。
当日リハーサルを終えた松尾の元に、元
〔松〕「実は僕もほぼ
松尾は詳しいいきさつは
〔色〕「そうそう。君はサッカー部に入っているそうだね。ダメだよ、君の天性の
〔運〕「出場者番号三番
放っておくとこの調子で何時間も話し続ける
※※※
写真撮影を終えた松尾はスマホをさっと開いた。
〔松〕「第一回戦の相手は『かしわ台コケッコー』。勝てる。だが、あそこと当たるのは違う意味でマズイな。『かしわ台コケッコー』を下した場合、二回戦は『うさぎ軍団』と『でかでかちゃん』の勝者」
飛島にメッセージを入れるも返信はない。
松尾は大人しくスマホをしまうと、立ち上がって指を開いたり閉じたりした。
〔二〕「松田君、リハ室空いたみたい。使わないの」
声を掛けてきたのは海外のコンクールで二位入賞した
〔松〕「どうぞ。僕は本番で弾くピアノのくせを忘れたくないので」
〔二〕「そっか。じゃ遠慮なく。それにしても、松田君はどうして一番不利なトップバッターになったのに、どうしてあんなに喜んだの。それともトップバッターだからこそ出来る秘策でもあるのかな」
前日のくじ引きでトップバッターを引き当てガッツポーズで思わず踊った松尾。
他出場者から冷たい視線を浴びる中、大人の微笑みで松尾を見守っていたのが出場者番号二番である。
〔松〕「えっと、あんまり気にしないでください」
どうしてもトップバッターを引き当てたかった理由を言えない松尾は、あいまいに笑うと再度スマホを取り出す。
時刻は午前九時を回った所だった。
〔飛〕〈こちらは現在三対一でリード。スタメンは
〔松〕「そうだね、集中」
鬼のイラストの添えられた飛島からのメッセージを見ると、松尾はタキシード下に着こんだ赤いうどん粉病Tシャツに手を当てた。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※ビーチサッカー会場パートに一部地の文を加筆(2024/6/29)
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