いざ頂点へ
72 父(自称ラノベ作家)のしこしこ化が止まらない件
〔仏〕「じゃ、行ってくる。本当に試合を見に来るの」
スポーツバッグをよいせと肩に掛けた仏像は、うさぎエプロン姿でしゃもじを片手に持った父を振り返る。
〔父〕「もちろんだお!(^^)! 五郎君の晴れ舞台だし、たーちゃん先生から誘われたし」
〔仏〕「その『たーちゃん@二十五歳丸の内OL』アカウントは内緒の
〔父〕「大丈夫だお。それに今日はわっちの小説をみんなに宣伝するんだお。絶対読者さんと星を増やすお」
父親は、しゃもじを天高く
〔仏〕「わっちって何だよ。あのな父さん。何のためにペンネームがあると思ってるんだ。あんな恥ずかしい話は中学生でも書かんぞ」
〔父〕「恥ずかしくないお。アルゴリズム分析を自作して、ビックワードを組み込んで毎日のサブタイトルも決めてるお。流入数や検索ヒット数に離脱タイミング、それから離脱ワードの傾向も監視してるお」
長年のハゲタカ
〔父〕「
単なる思い付きで話を作っている訳ではないと主張され、仏像は頭を抱えた。
〔仏〕「頼むから、今日一日は仕事用の話し方をしてくれ。本当に、そうでないと他人のふりするから」
〔父〕「無駄だお。今日はピーマン研究会のみんなと一緒に応援しに行くんだお。皆大きくなった五郎君に会いたがってるお。それから今日の夕飯こそトンカツだお。ダディと一緒にトンカツ食べるお」
嘘だろと膝をつきそうになりながら。仏像は後ろ手で玄関を締めた。
〔仏〕「日に日に症状が悪化してやがる。決定的にぶっ壊れたのはやっぱり
仏像はシャモの話を真面目に聞かなけりゃと思いつつ、駅へと急いだ。
〈午前七時
〔シ〕「何で今になって
同じ電車に乗っていたシャモを捕まえると、仏像はシャモに父親の『異変』についての心当たりを告げた。
〔仏〕「父さんの『しこしこ化』は
〔シ〕「知ってる。誰にも言ってないけど」
〔仏〕「済まん。黙ってて悪かった。外資系には良くあることだから、とっとと次を見つけて転職するとは思っていたんだが」
〔シ〕「お宅の父ちゃん、あの状態からすぐ転職できると思う」
〔仏〕「あの状態からって。
〔シ〕「『
〔仏〕「止めてくれええええ。だれかあれに
仏像は頭を抱えて改札口の外でしゃがみこむ。
〔下〕「おはようございまっす。聞いてください。ついにサッカー部が二学期から活動再開で、何と監督がすっごい大物が来てって。あれ
貧血を起こしたようにうずくまる仏像を、改札から元気よく出てきた
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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