65 ダディ
仏像が松田家の
〔シ〕「よっしゃあと一枚で完売」
〔仏父〕「あああっ、それ探してたの。五郎君のTシャツの色違いだあっ」
シャモが最後まで売れ残った深緑色のうどん粉病Tシャツを手にしていると、やたらとテンションの高い声が背後から響いた。
〔?〕「五郎君。ああ、息子さんの。大きくなったでしょ」
〔仏父〕「そうなんだけど反抗期でね。朝ごはんのフレンチトーストは食べないし、僕と
〔?〕「
〔仏父〕「だってダディらしいことを全然してやれなかったから、埋め合わせをしたくって。お兄さん、それ欲しいんですけどおいくら万円なりか」
油切れのロボットのごとくぎぎぎと声の主に振り向くと、
〔シ〕『なあ仏像。お前の父ちゃんって
庭先で松尾と二人、線香花火を見つめていた所にシャモから電話が入った。
〔仏〕「それがどうした」
ちょっと前まではそうだったんだけどと思いながら、仏像は話をうながした。
〔シ〕『五郎君のTシャツだって言いながら、うどん粉病Tシャツの最後の一枚をお買い上げ。それから、五郎君とおそろいってルンルンしながら
〔仏〕「げっ。何でそこに行った。
〔シ〕『多分違う。だってあのテンションの高さなら、俺と仏像が知り合いって分かってたら絡みまくってきたはずだもん。それに、お宅の父親と俺は二人で
〔仏〕「済まねえ。
〔シ〕「後輩らしき人が一緒だったから大丈夫だと思うけど、かなりなテンションだぞ。近所のガキと変わらないクラスのはしゃぎぶりだ」
〔仏〕「済まん。
仏像が電話を切ると、果たしてハイテンションな父親からのハイテンションなメッセージが届いていた。
〔仏父〕「【五郎君。今日はピーマン研究会の後輩と久しぶりにお祭りに行ったお。五郎君とおそろいTシャツに
〔仏〕「誰だよ藤崎さんって。絶対一緒に行かねえぞ」
ぼそりとつぶやいてスマホをしまった仏像の一言を、耳の良い松尾は聞き逃さなかった。
〔松〕「藤崎さんって――」
〔仏〕「そう言えば、
正確に言えば、【松尾が新百合ヶ丘の『
〔松〕「そば女って妖怪みたいな言いぐさを。僕の仕事仲間の藤崎しほりさん。所属するバレエ団の練習場が新百合ヶ丘にあるだけで、彼女は新百合ヶ丘の女と言う訳では」
〔仏〕「俺の父親が今から会う藤崎さんご一家とは無関係なんだな」
仏像はこれ以上俺の人間関係に父親がずかずか入り込んでくるのはごめんだと言いながら、線香花火の
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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