37 フォトショ要らずのイイ男(ただし一定条件下に限る)
『シュッとするメイク』の仕上がりに散々な感想を浴びせられた
〔麺〕「大丈夫大丈夫。写真映りを計算して『これ』ですから。一枚スナップを撮りましょう。この照明の下で。はいっ」
〔長〕「フォトショいらずって本当だ」
〔天〕「でもこれで外うろついたりしないほうが良いっすよ。本当に」
プロレス同好会が
〔多〕「
〔飛〕「何と言うか、ずいぶん『
〔麺〕「大丈夫です。写真にするとこうなります」
麺棒眼鏡は自信満々に写真データを見せるも。
〔多〕「それはスナップの話だろ。集合写真で
〔麺〕「大丈夫。僕だって伊達に地下アイドルを追ってるわけじゃないんです。任せてください」
一同が半信半疑で
〔青〕「この角度でレフ版を当てると多分全員二割増しで撮れる」
果たして、出来上がった集合写真を見た
〔下〕「三元さん、
信楽焼のタヌキのごとき三元の変わりように、下野がリスのような目をキラキラさせる。
〔三〕「手っ取り早くメイクで」
〔天〕「だからそのメイクで外は出歩けませんよ」
〔三〕「気に入った。俺がしゅっとして見える」
〔三母〕「何があったんだい」
〔三父〕「代表戦で顔を塗ってるのはいるが、こんな小さな大会でそんな顔をしているのは
他のお友達はしていないのにどうしてお前だけ、三元の両親は呆れかえる。
〔多〕「三元君のご両親が応援に来てくれたぞ。皆第二試合も気合入れていくぞ」
三元そっくりの母親と、みつるに目元が似た父親に一同はぺこりと頭を下げた。
〔多〕「今日は試合用の特注弁当だ。第二試合が終わったら頂こう。それから出場者はバナナを食べておけ。今食べるんだぞ」
〔三〕「俺もバナナ食いたいよ」
〔三母〕「あんたはダメだよ」
〔三〕「じゃ、俺早弁したい。腹が減ってしょうがないや」
〔多〕「試合に出ない奴は食べても良いか。ただし昼休みは何にも無しだぞ」
松尾に飛島と三元が、弁当に飛びついた。
〔三〕「母ちゃんも
〔三母〕「お友達の見た目をからかうのは止めなさい」
ペットボトル片手に戻って来た
〔三〕「違うよ、本名だもん」
〔三〕「『
〔麺〕「それがあるんですよお母様」
三元の母のうしろからぬっと現れた
〔三母〕「あらやだ、こりゃ驚いたごめんなさいね。
〔三父〕「
〔三母〕「苗字だけでも珍しいのにお名前がねえ」
『眼鏡ですってお父さん』と、三元の母は目の前の学生の本名を飲み込めない様子である。
〔麺〕「母方が三代続く眼鏡職人で、後を継がないなら代わりに長男の名前を『眼鏡』にしろと」
〔三〕「眼鏡君ってそんな由来だったの」
〔麺〕「僕の名前と引き換えに、父さんはサラリーマン生活を送ってる」
〔三〕「もう何も言えねえ」
〔麺〕「案外この名前も便利なんです。初対面の人と話す時にそれで話題が持つし、ペン回しの大会や練習会でもすぐ打ち解けてもらえるし。ま、ペン回しでは『ロトエイト』で登録していますが」
いたたまれなさでうつむいた三元とは対照的に、
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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