初の公式戦 それは甘くほろ苦く
34 初の公式戦
時は七月第一週の土曜日、ついに『落研ファイブっ』初の公式試合がやってきた。
熊五郎曰く、初心者チーム向けの試合である。
〔松〕「
〔仏〕「慣れだろ」
初心者向けとあってレジャー感覚で参加しているチームも多い中、明らかに異彩を放つ一団が入場してきた。
〔仏〕「相変わらず暑苦しいジジイ共だな。あれとは絶対当たりたくねえわ」
〔松〕「初心者相手に無双して優勝実績を増やす気ですね。大人げない老人どもだ」
〔青〕「熊五郎さん、目線こっちに下さいっ」
〔三〕「グラビアモデルかよ」
放送部の
〔多〕「ただでさえごったがえしてるってのに、うわっ」
〔親〕「はーしーらーなーい」
〔富〕「おやおや、そちらさんは
一同の前に現れたのは【報道】の
相変わらずマッシュルームカットの金髪を振り乱して笑っている。
〔多〕「先日はどうもどうも」
〔富〕「こちらこそ。遊び感覚でやろうとした僕らが甘かった。もう二度とやりません。コリゴリですよ」
富士川率いる『
〔富〕「ユニフォームも決まってますねえ。さすが若いな絵になるな。ちょっと撮影させてもらっていいですか」
ざっとユニフォーム姿の一同を見渡した富士川があれっと声を上げた。
〔富〕「今日は【みのちゃんねる】さんはいないの。いたら仕事の依頼をしたかったんだけどな」
〔多〕「
〔シ〕「ねえしほりちゃん。俺、試合前のセレモニーがあるから。うん、後で戻ってくる。大丈夫だから、ね」
無言をつらぬくしほりは、
はた目からは分からないが、
まるで
〔家〕「お嬢様。殿方には殿方のお付き合いと言うものがございます。どうぞここはこらえて。婿殿の勇姿を遠くからそっと応援するのもまた
※※※
〔シ〕「サーセン、遅くなりました」
事の一部始終を見ていた
〔富〕「いやいやこれは人気配信者【みのちゃんねる】に一大スキャンダル発覚だ。HDLがスクープ撮っちゃっても良い。いや冗談冗談。大会の取材だからさ、チームの集合映像を撮らせてよ。
名刺をシャモに差し出しながら
〔シ〕「俺のスキャンダルは金になりませんって。本当に勘弁してくださいよ」
富士川の依頼に答えてうどん粉病Tシャツ姿で腕組みをした一同を、富士川は何が面白いのかはしゃぎながら色んな角度で撮影した。
※※※
〔多〕「第一試合の相手は『そば湯美人』。男女混成社会人サークルだそうだ」
〔シ〕「今日は一般の部だから男女混成チームもこっちになるのか」
〔多〕「明日がキッズおよび女性のみチームの試合だ」
〔三〕「じゃ、『でかでかちゃん』も来るって事」
〔多〕「シード扱いだから入りはもう少し後かも」
〔シ〕「あの力士軍団がシード扱いになるほど強いなんて、初見で分かるわけがねえよ」
〔下〕「
〔多〕「応援部が俺たちの試合の応援をするから、それに合わせて早く来たか」
指定された場所に荷物を置きに行くと、応援部と放送部の
〔樫〕「おはようございます。第一試合の応援をさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
〔多〕「
〔樫〕「お気持ちは有難いのですが、屋外トレーニングに出かけましてしばらく戻らない予定です」
〔多〕「それもそうか。シードだもんね。
〔樫〕「その通りかと」
〔青〕「報道以外ピッチ脇には入れないから、会場は望遠を使って」
〔樫〕「僕らとピッチAを同一の絵に収めるのは難しそうですか」
〔青〕「やっては見るけどちょっと厳しいかも。富士川Pから映像素材の一部は提供しても良いとの
富士川と会ったのは一回だけというのに、一介の高校生が堂々とずうずうしい要求を出来たものだと
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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