52-2 勝ちに行け
〈『落研ファイブっ』対『うさぎ軍団』第一ピリオド〉
〔シ〕「この肉体派メンツに
プロレス同好会と元U15サッカー日本代表候補から成る肉体派メンバーに混ざった子パンダのような
ただし恐れ知らず度はフレンチブルドッグ並みである。
〔仏〕「パンタみたいなナリのくせに、メンタルは闘犬並みだからな」
〔シ〕「向こうさんはテニスとボクシングに柔道のインハイ出場者。それにサンフルーツ広島ユースの優勝メンバーだろ。勝ち目があるのかよ」
〔仏〕「サッカーでインハイベストエイトの赤うさぎもな」
スポーツエリート独特の体の線は、うさぎエプロンでは隠し切れない。
〔シ〕「俺さあ、戦術分析官やるわ」
戦術分析ノートを松尾からもぎ取ろうとするシャモを、松尾は冷たくあしらう。
〔松〕「ちょ、この野獣眼鏡えええっ。たまには俺の代わりに試合に出てよお」
〔松〕「無理です。魅力 知力 武力っと」
松尾の元に駆け寄って来たシャモをにべもなくあしらうと、松尾は戦術分析ノートにまたも武将ゲームのスペック表めいたスコアを書き入れる。
〔三〕「二人ともスタメン外されて悔しくねえのか」
〔シ/仏〕「全然」
〔仏〕「文化祭は『
〔三〕「それ以前に、文化祭の時には俺ら三年はもう引退だろ。来月に老人ホームの
〔シ〕「まだちゃんと
〔三〕「半分以上顔つなぎだよ。俺、成績良くねえしこれ以上学校行っても仕方ねえと思って。調理師学校に通って『味の
〔シ〕「そうか。卒業まで後十か月切ったんだもんな」
シャモは
ピッチ脇では保護者数名とピンクうさぎが、走り回って暴れる子供たちに神経をすり減らしていた。
松尾は
〔飛〕「あっ、ニア!」
〔松〕「うわ、エグイコース」
二人が頭を抱えた瞬間、
〔子〕「ギャーっ! みっちーっ!」
子供たちの目がサンフルーツ広島ユース上がりの青うさぎに集中する。
〔松〕「僕らが勝ったら子供の夢を奪うって事にならない。ひどい心理戦もあったものだ」
〔飛〕「勝って負けて負けて勝って――。人生シーソーゲームだよ」
潮風に吹かれるキューピー人形のような飛島の横顔を松尾がちらりと見ると、第一ピリオドの終わりを告げる笛が鳴った。
〔多〕「一点ビハインド。走り回らせてバテさせて、二点返して勝利だ」
第二ピリオドへ向かう『落研ファイブっ』。
〔多〕「第二ピリオドメンバーの交代は
〔シ〕「ダセーっ。こんなんじゃサッカーやってますって合コンで自己紹介しても、女の子が釣れねえよ」
〔仏〕「せっかく前に釣った女は『お百度参り』だったしな」
〔シ〕「そう言う仏像だって、結局女っ気一つもねえじゃん」
〔仏〕「
〔シ〕「出た、この
そもそも
〔餌〕「あー外されたっ。悔しーっ。まだハンドスプリングスローも決めてないって言うのにっ」
〔松〕「今日はまだスローイン自体がありませんね」
〔餌〕「そうなんだよね。あのうさぎ軍団、ただモノじゃないよ」
〔飛〕「それにしては
飛島が二人の会話に割って入るも。
〔餌〕「『良くやった』じゃ結果にならないもん。ピッチの上には勝者と敗者しかいない。そうでしょ松田君」
〔松〕「その通りです」
〔飛〕「ドローはありますよ」
〔松/餌〕「そう言う事じゃないんだよ」
強い口調で口を揃えて言われた飛島が思わず首をすくめると、第二ピリオドを告げる笛が吹かれた。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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