18 麗しのパトロン
〔仏〕「すげーっ! たった一日であの荒れ地がここまで整備されたのかよ」
日曜日の朝。
〔多〕「後は業者さんが砂枠を作って砂入れをしてくれれば晴れて使用開始だ」
〔三〕「
〔餌〕「後はご想像の通り、
〔仏〕「アレっ、
〔餌〕「昨日の帰り際にとある耳より情報を聞きましてね。ほらっ。噂をすれば」
〔松〕「皆さん、済みません。僕は止めたのですが」
〔シ〕「VIOは
松尾とシャモの暗い口調に、プロレス同好会の三名も思わず息を飲んだ。
※※※
〔多〕「草サッカー同好会の施設整備費用を寄付して下さる
〔仏〕「マジか。どれだけ
〔三〕「何だ、金の算段はあったのかよ。心配して損した」
一同は戸惑いながら、薄手のスプリングコートにグレーのストレートパンツ姿の千景に礼をした。
〔千〕「皆さんごきげんよう。
いつになく
〔松〕「叔母さんからチラシを受け取っても気にしないで下さい。まかり間違ってもVIOに興味があるとか言わないで」
〔餌〕「えっ、そのためだけに来たんだけど。春日先生ーっ」
キャンプチェアに向かって駆けだす
〔三〕「あいつ【みのちゃんねる】のVIO回をかぶりつきで見てたもんな」
〔松〕「餌さんに、通常は男性が
〔シ〕「テロップには入れたけど。そうか。松田君、
※※※
仏像がビーチサッカーピッチのサイズ通りに張ったロープを、プロレス同好会の
〔長〕「さあ天河、ロープに足をタッチしたっ」
〔服〕「ここで
〔仏〕「部室でやれ部室で」
整地した土の上を踏み荒らすプロレス同好会三名に下がってろと言うと、仏像はぶつくさ言いながら土を
〔三〕「あれ、プロレス組は」
仏像に怒られて静かに石ころ拾いに戻っていたはずのプロレス同好会の姿が、いつの間にか消えている。
〔松〕「ああああっ!
〔仏〕「
〔シ〕「学生価格とは言え
〔餌〕「顔出しで
〔三〕「無料だったら受けようかな。ちょっくら話聞いてくる」
〔松〕「
松尾は遠い目をしてつぶやいた。
※※※
〔千〕「では皆さまごきげんよう。良い一日を」
〔松〕「営業に来ただけじゃないかあの人。
〔仏〕「皆まだ未成年だから、親の同意が得られなかったって言って逃げろ」
〔シ〕「
〔餌〕「僕はちゃんと正規の学生料金を払うから、春日先生が担当してくれるし」
〔松〕「誰が担当するのかちゃんと聞きましたか」
〔餌〕「心配しないで。春日先生は
あざと可愛さを強調するようにパンダのフード付きパーカーを被った
〔三〕「堂々と水着になれるボディが彼女づくりには大切だって言われてさ」
〔シ〕「シェイプアップ三か月強化コースモニターか。食事制限があるんだが。それって
〔三〕「最初に人間ドッグを受けられるって聞いたし」
〔餌〕「人間ドッグ目当てってそんな。十七歳の言う事じゃないですよ」
〔三〕「十七歳じゃねえよ。皆して俺の誕生日忘れてんじゃん」
〔仏〕「あーっ! 今日
プロレス同好会も加わってハッピーバースデーと歌い上げると、三元は小さくありがとよ、とつぶやいた。
〔仏〕「結局
野太い歌声が収まると、仏像が背後に立つ
〔多〕「
〔松〕「
松尾が頭の周りに花を飛ばさんばかりに喜んだ。
〔仏〕「ピッチ代にボールにゴール。全部足しても松尾の
〔シ〕「まさか本当にロレックスのコスモグラフデイトナをプレゼントされたの」
〔松〕「もらっても困る高価な物を押し付けて来るんです。VIO長者だけに」
〔仏〕「あんまりそんな事言ってると、あだ名がVIO長者になるぞ」
〔松〕「それは勘弁。まだ
〔三〕「そう言えば
〔松〕「季節が過ぎましたので」
松尾は仏像おさがりの眼鏡をくいっと上げて答えた。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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