13-1 助っ人参上
〔下〕「一年七組の
〔多〕「えっ、サッカー部を休部してうちに来たの」
〔下〕「ビーチサッカーは前から興味あったんで」
サッカー部のいなくなったグラウンドに居並ぶ草サッカー同好会こと落研部員。
山下に背中を押されて助っ人となった
〔多〕「
〔仏〕「ありがたく思えよ
その言葉に
〔多〕「ちなみにサッカー部でのポジションは」
〔下〕「左サイドバックです」
〔多〕「では
放送部の
〔多〕「実は
〔長〕「お前は不幸な男だな。俺と競わねばならぬとは」
〔天〕「口で勝って力で負ける。愚かな奴もいたものだ」
二人は顔を見合わせてうなずきあうと、突然言い争いを始めた。
〔仏〕「
〔下〕「さあ始まりましたゴレイロ(GK)の座を掛けたプロレス同好会
仏像のつっこみに呼応するように、
〔松〕「ゴレイロ(GK)は
いきなり話を振られた松田はぎょっとしながらも
〔多〕「PK五本勝負。より多くPKを止めた方を正ゴレイロとする」
行き当たりばったりながら
〔長/天〕「いざ、勝負」
〔仏〕「あれ、結局レフェリー服部は来なかったの」
〔長〕「服部君は進路面談で来れない」
〔天〕「金曜の練習には顔を出すって」
※※※
〔多〕「
よっこらしょういちと立ち上がった
〈正ゴレイロ獲得タイトルマッチ 先攻
〔天〕「掛かってこいっ」
ぴょんぴょんと軽くゴール前で何度か飛んで、腰を落として大の字に手を広げた
〔多〕「正ゴレイロ
〔シ〕「あああっ。すかった」
シャモが右隅を狙って蹴うも力なく転がって
〔
〔仏〕「学校のグラウンドでスコップ出来る訳ないだろ」
固い地面につま先を思い切りぶつけた
〔多〕「山下君もサッカー部を休部して練習に参加しなよ」
山下は両腕で大きくバツ印を作る。
〔多〕「次、
〔山〕「ブラボー!」
山下の声援を背に静かにうなずいて松尾にタッチすると、
〔多〕「松田君」
五年前まで地元チームの九番を背負っていた松尾は、久しぶりの感覚に負けぬよう深呼吸を一つすると
〔下〕「また抜きすげーっ」
〔山」「おいおいビーチじゃグラウンダーは転がらないぞ」
〔松〕「あ、ビーチの想定忘れてた」
〔多〕「よし、最後は
仏像は声援を送る山下に親指を立てると、片足をボールに軽く乗せて笛を待った。
〔多〕「はじめ」
笛が鳴るや否や、
〔山〕「惜しい! あとちょっと低く」
〔仏〕「だっせー俺。ふかしすぎだろ」
ゴール裏に陣取る
〈正ゴレイロ獲得タイトルマッチ 後攻
〔多〕「次、
いつの間にか、サッカー部の部員が山下の脇でPKを見ている。
〔多〕「お前ら皆休部してこっち来い。駄目か。じゃ、同じ順番ではじめ」
〔シ〕「よっしゃーってあれ」
〔三〕「【逆張りのシャモ】がPKなんていつまでたっても入るわきゃねえよ」
その言葉に、シャモ以外の一同がうなずく。
〔長〕「違う蹴り方で挑むべきだったな、坊や」
〔仏〕「
仏像が冷静に長門に向かって突っ込みを入れている間に、
〔
〔山〕「ビーチサッカーの練習だから、浮き球が良いと思う」
〔仏〕「そんな高等技術をこの子が出来ると思う」
〔
嘘でしょと二人を見比べる松尾に、餌は胸を張る。
〔仏〕「松尾は十一月だよな」
〔多〕「おーい
〔餌〕「だめーっ! 笛っ!」
〔サッカー部〕「ファーっ!」
〔三〕「もう限界」
〔シ〕「たったそれだけの動きで。まじでスライム以下だぞ」
〔多〕「
ぴっと笛が吹かれて一呼吸置くと、
〔サッカー部A〕「さすが
〔サッカー部B〕「どんなボールでもきっちりミートさせるのはさすが」
〔仏〕「松尾が勝負師の顔になってる」
〔山〕「相当に
松尾は
〔山〕「すげーっ! うちのFWに欲しいんですが。何あの
ゴレイロの長門が思わずのけぞり、ボールがネットのど真ん中を揺らした。
〔サッカー部A〕「花粉眼鏡君が
〔サッカー部B〕「
PK合戦の大トリを飾るのは『
〔多〕「大ラス、
〔仏〕「あのスーパーゴール二本の後はきついわ」
正ゴレイロ(GK)の座を
〔山〕「オーバーヘッド
〔仏〕「どうやってPKでオーバーヘッドすんだよ」
『本物』のサッカー部のDFである山下のヤジに苦笑しながらも、仏像はボールに右足を掛けて笛を待った。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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