13‐2 男の敵は男
〔山〕「すげえ。何でいきなり『パネンカ』がやれるんだ」
〔下〕「俺一回だって『パネンカ』でPKを蹴った事すら無いっす」
〔山〕「普通は無い。あれを出来るのはよほどのテクニシャンか
〔サA〕「さすがは『
〔多〕「よーし終了。正ゴレイロの座は
〔長〕「今に見てろおおおおっ」
仏像のシュートの成否で勝敗が分かれた二人。
敗者・
〔シ〕「
〔仏〕「何楽しようとしてんの」
〔山〕「むしろ松田君がピヴォ(FW)で決まりでしょ。小四まで群馬で九番張ってたんでしょ。経験者じゃん」
仏像の突っ込みに山下が口を挟んだ。
〔多〕「だーめーでーす! 松田君は
〔山〕「もったいねえなあ。
首をひねりながらも、山下は慣れ親しんだグラウンドを後にした。
〔多〕「お疲れさん。グラウンド整備を終えたら上がっていいぞ」
ストレッチを終えた一同に
〔仏〕「本気でビーチサッカーの大会に出る気なのか。もしそうなら、グラウンドで練習したって仕方がないだろう」
〔多〕「出ないわけないだろう。何のために助っ人までスカウトしたと思ってるの」
〔仏〕「だったら練習場はどうするんだよ。グラウンドでいくら練習したって本番は裸足だしボールのサイズも違うし。陸上部の砂場を借りる訳にも行かないし」
〔シ〕「そうだよ先生。ビーチサッカーの大会に出るなんて簡単に言うけど、練習場を予約するのだって大変だよ」
だからとりあえずグラウンドで玉蹴りしてお茶を濁そうぜと、シャモは言外に匂わせるも。
〔多〕「自分たちで練習場を整備するなら使って良いって言われた場所があるんだよ。ちゃんと理事長の承認もとってあるの。心配しないでよ」
〔仏〕「自分たちって、誰」
多良橋は無言で仏像を指さした。
〔仏〕「嫌だよ。整備ってそもそもどのフェーズから手を入れりゃ良いんだよ」
〔多〕「まあまあとにかく場所はあるから。熊五郎さん経由で八五郎さんが頼んでいるピッチの造営業者から見積もりを取っている所」
〔仏〕「自分のやりたい事だけはさっさとやるんだよないつもいつも」
〔多〕「ま、そう言う事だから。それまではグラウンドと、組めればアウェーで練習試合とかグラウンドレンタルとか。そんな感じ」
〔餌〕「ふわっとしすぎです先生」
平常運転ですねと
※※※
〔仏〕「じゃ、お疲れ」
グラウンド整備を終えた仏像が助っ人達に手を振ると、天河が見た目年齢四十歳の顔を赤らめながら仏像に近寄った。
〔天〕「あの、
〔長〕「合コン組んでよ。それが僕らプロレス同好会が助っ人に出る条件だから」
しどろもどろの
〔仏〕「えっ、聞いてないぞ。青柳の野郎また無断でいい加減な事請け負いやがって」
〔餌〕「そうだよ。僕らも二年生になってから一度も合コンしてないよ。そろそろ合コンしてくれないと、僕が合コン用にため込んだ
そうだそうだ合コンさせろーっと三元がシュプレヒコールのごとく繰り返す。
〔仏〕「嫌です。お前ら俺がいくら合コン組んでも全部台無しにするんだもん。いい加減こっちだって頼むの気まずいわ」
〔三〕「けちっ。そうやって自分だけは女の子をダース単位で確保して」
〔仏〕「人聞きの悪い事を言うんじゃない。勝手に寄って来るんだから仕方ねえだろ」
仏像の一言に、その場にいた男たちがほぼ全員敵化する。
〔下〕「
〔仏〕「掛けねえって。俺そもそも女苦手なんだよ」
〔長〕「そういうさ、がっついてなくってさ、生まれつきイケメンでさ、頭が良くてさ、スポーツ万能でさ、あのさ、言っていい。
〔仏〕「待て待て
〔天〕「僕はね、初対面の親子にオジサン扱いされるんだよ。顔と体は持って生まれたものだから、どうしようも出来なくて」
〔餌〕「仏像、大きな体の
〔仏〕「それ俺のせいいいい?!
仏像が集中砲火を真っ向から浴びていると、意外な人物が助け舟を出した。
〔シ〕「合コンじゃなくて、【みのちゃんねる】のオフ会でも良ければお前ら来る。ビーチサッカーを女の子と一緒にやる企画ってどうよ」
〔長〕「マジすかっ! 行きます行きます。うちの服部も連れて行って良いっすよね」
〔シ〕「良いよ。天河君と三人で来るのね。マジで合コンじゃないから、女の子の年齢とかレベルとか文句言いっこなし。後カメラ回すからそのつもりで」
〔長/天〕「あざっす!」
かくしてプロレス同好会の三名はまんまと無給で【みのちゃんねる】に出演する羽目になったのである。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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