8-1 一並高校サッカー部活動自粛につき。
〈臨時休校明け月曜日 青空全校集会前〉
暴動後の物々しい空気感が残る中、
〔仏〕「山下、あの後どうなった。新監督は」
〔山〕「それ所じゃない。あんなにテレビやネットに流されちゃもうお手上げだ」
仏像がサッカー部の山下に声を掛けるも、最初から
大暴動の
〔下〕「山下先輩お早うございまっす」
〔山〕「
松尾のクラスメイトのサッカー部員である
〔下〕「やってないっす。部活休みになったって親に言ったら、弟の
〔山〕「お前は本当に気楽で良いよな」
〔下〕「あざまっす! あっ、まっつんこっちこっち。おはよー」
松尾は自分が呼ばれているのだと一瞬分からずにきょろきょろとしていたが、仏像と
〔松〕「お早うございます」
〔下〕「まっつんおはーなんよ」
まっつんなどと呼ばれた事は生まれてこの方無かったし、
戸惑いながらあいさつを返す松尾を引きずるように、下野は『一年』の立て看板向かって駆け出した。
〔山〕「とりあえず今の所処分の対象外になりそうな部員数が、
リスクを
〔仏〕「
さすがにバツが悪そうな顔で、仏像に呼ばれたシャモがそろそろと近づいて来た。
〔仏〕「何かサッカー部に言う事ねえ」
〔シ〕「特ダネあざす!」
ヤケクソ気味に山下に言うと、シャモは『三年』と書かれた立て看板の方に向かおうとした。
〔山〕「『みのちゃんねる』さん。あんたとんでもない事やってくれたんですけど」
〔シ〕「暴れて商店街をめちゃくちゃにした奴らに言えよ。何逆切れしてんの」
山下に言い捨てるとシャモは今度こそ去っていった。
※※※
カメラを避ける為には体育館で全校集会をすれば良いのだが、体育館のサッシには投石による大穴がいくつも開いている。
ずらりと並ぶカメラから身を隠すようにチューリップ帽を被った教頭は、入院中の校長の代わりに話し始めた。
〔教〕「ゆえに当校サッカー部の全活動を
〔山〕「おい何も聞いてないぞ」
仏像の隣に並んでいた山下が思わず声を上げる。
〔教〕「なお、当校草サッカー同好会につきましてはその母体が落語研究会でありまして、当校サッカー部とは全く無関係であります。ゆえに、その活動は継続される事と致します」
〔仏〕「まだやんのかよ」
仏像が呆れたように天を仰いだ。
※※※
〔下〕「
〔山〕「父兄やOBに相談して、処分を撤回してもらおう。無罪の部員まで練習すらできないのはおかしい」
全校集会が終わるや否や駆け寄ってきた
〔部A〕「キャプテンのお父さんが弁護士だったはず」
〔部B〕「キャプテンは飲酒写真の中心にいたじゃん」
〔部C〕「使えねえ。他に誰か使えそうな人って」
彼らを横目にすっくと立ち上がった仏像は、シャモを呼んだ。
〔仏〕「なあシャモ。チャンネル登録者数がこの一件のおかげで十万人を突破したんだろ。だったらこいつらの苦境を救える人脈ぐらいはあるだろ」
〔シ〕「まさか全部員対象で無期限に
〔部A〕「マッチポンプでまた稼ぐのか。最低だな」
〔シ〕「俺だって七割を収入から差っ引かれるし色々面倒もあるし。お前ら
〔部B〕「『みのちゃん』も
〔シ〕「好きでなった訳じゃねえ」
シャモがやさぐれ感たっぷりに、グラウンドにヤンキー座りした。
〈青空全校集会後 『一年』立て看板前〉
〔多〕「松田松尾くーん。ちょっと良いかな」
その隣にはいかにも不服そうな顔をした
〔多〕「草サッカー同好会は活動を継続して良いって言われただろ。だからさっそくHR後に昼まで練習するつもりなんだけど。それってマーベラスでしょ」
〔松〕「いや全然」
〔仏〕「何も今日悪目立ちする必要はない。ここで練習したらカメラの
〔多〕「『草サッカー同好会』に『
〔仏〕「俺の古傷えぐるの止めて」
冗談とも本気ともつかぬ口調で告げる
〔多〕「本当にもったいないよ。これまでもこれからも、俺はずっと『ゴー君』の大ファンだし。ねえ、自分がどれだけすごいか分かってる」
〔仏〕「止めろって言っているのが聞こえませんか。カメラの
仏像はガンっと『一年』の立て看板を蹴ると、まもなく始まるHRの列へと戻っていった。
※※※
仏像の
〔シ〕「GW中に草サッカー同好会の強化合宿ってどう言う事だよ。しかも日帰りだって。日帰り入院じゃねえんだぞ」
〔仏〕「場所は
下校の人並みに紛れて歩きながら、シャモと仏像が
〔三〕「俺は日程的にはどこでも大丈夫だけど、何で
〔仏〕「俺は行く気なし。
〔餌〕「ええーっ、仏像行かないの」
仏像はにやつく
〔松〕「僕は群馬に帰るんで無理ですね」
〔餌〕「仏像も松田君もいないなら、僕も行かない」
〔三〕「そうしたら俺とシャモだけじゃん」
〔シ〕「俺と
がやがやと話しながら駅にたどり着くと、待ってましたとばかりに特急電車が
〔仏〕「じゃあな、
特急の発車アナウンスに
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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