2 一並高校落語研究会、解散
〔仏〕「
放送部に
〔餌〕「中学校の名前を
〔シ〕「父親のDVから逃げて横浜に来たか」
〔三〕「校則なんてあって無いような学校だけど、顔だけじゃなくて腕から指まで隠した
〔仏〕「そんなの
〔餌〕「そうですね。せっかく横浜に逃げてきたんだから、安心して過ごして欲しいです」
人間の脳みそとは恐ろしい。
シャモの一言から、落研メンバーの中では
※※※
横浜港を一望できるタワーマンションの
「あら松尾ちゃんどうしたの疲れた顔して」
「そんな事はないと思いますが。それより
「オバサンって呼ばないでってあれだけ言ってるのに。松尾ちゃんのいじわる」
下宿先の主であり松尾の母の妹にあたる
「本当に松尾ちゃんったらひどい。だって中学の
三十代半ばの独身超美人美容外科医は
「どこの高校生が学校に
「ウブロかフランクミュラーぐらいで十分って事」
「
「
一度むくれると、
これではどちらが大人か分からないとため息をついていると、珍しく空気を察したらしい
「結局どこの部活に入る事にしたの」
「落語研究会です。月水金が活動日なので、その日は帰りが一時間ほど遅くなります」
松尾は説明会とオリエンテーションの話をしかけたが、
「あらさっそく明日が活動日なのね。松尾ちゃんが落語とは意外だけど、古典芸能だから
「ええ、まあ」
松尾はあいまいに笑うと自室に引っ込んだ。
〈水曜日
〔多〕「
視聴覚室の扉を開けた
〔部A〕「何で見回り係が
〔部B〕「
〔部C〕「メキシコ湾に泳いで帰れや」
〔部D〕「メキシコ湾に〇〇るぞ
〔多〕「おい今メキシコ湾に○○るって言ったやつ。お前出禁」
【落語研究会 新
〔多〕「
〔部A〕「ぎっくり腰で休んでいるだけじゃなかったの」
ざわつく部員に「
〔多〕「話は
〔部B〕「ねえよそんなの」
~~~
〔宗〕『
〔部C〕「いやあなた
〔部B〕「たった
〔部D〕「何その電気工事用ヘルメットみたいなの」
〔宗〕『
画面の中の
〔部A〕「耳がっ。耳がああ」
〔部B〕「こめかみ、こめかみに来る」
〔部C〕「ああああゆあw5@ばtrわああああ」
耳をふさぐ者、大声を出して
~~~
〔多〕「
〔部A〕「その結果がコレ」
〔部B〕「あの毒にも薬にもならぬ、影の薄い典型的五十代後半男性が何でまた」
〔部C〕「とりあえず、耳が痛い。もう止めて、分かったから」
耳をふさぎながら部員達が口々に訴える中、
〔多〕「
〔麺〕「要するに、退職してヒマを持て余したおっさんが通る道ね。すぐ飽きるでしょ」
〔シ〕「奴は本気だ。何がどうなったか知らないが、
〔部A〕「家でも建てる気か」
〔多〕「だったら良かったんだがね。
〔部B〕「何で
〔部C〕「先生に落語が分かるのかよ。アメリカ暮らしが長すぎて日本語だって怪しいじゃねえか」
〔部D〕「二十五歳はサバ読みすぎ。どう見ても
〔多〕「お前ら出禁」
部員たちの突っ込みをにべなくあしらうと、
〔多〕「メキシコ湾のスーパーノヴァ・
〔餌〕「小粋なアメリカンジョークでしょうか」
〔三〕「聞いてないよ!」
〔シ〕「言ってる事がおかしいだろ。何で俺らがサッカーをやるんだよ」
〔仏〕「全部やり直せ。時を巻き戻せ」
〔多〕「俺もそこまで鬼じゃない。他部活の先生方に掛け合って、各部活で
〔三〕「ちょっと、何するんですか」
〔多〕「
〔三〕「それにしてもこんな扱いは。あっ、
〔多〕「
〔三〕「そんな事はありません。僕は小さい頃から
〔多〕「だから合コンもナンパも失敗するんだよ」
〔多〕「落研の面々が合コンを開いては失敗続き。
〔仏〕「シャモは
スノボ選手として全米・世界ジュニアの頂点を極める一方で模試の全国成績優秀者の常連でもあり、『全自動女子どもホイホイ』『女子
各方面に異様なまでのハイスペックぶりを見せつける彼は、諸事情で競技生活を退いた後は仏像を
〔シ〕「音楽性の違いから
〔仏〕「
渋い顔で仏像が返すと、シャモは『時そばジャカルタ編』を
〔餌〕「サッカーをネタに新作落語の一つでも作れたら面白そうじゃないですか」
〔シ〕「お前って本当にたくましいというか、図々しいというか。パンダみたいな顔して折れない男だよな」
〔餌〕「そりゃパンダの
うまい事言ったとドヤ顔を決める餌から視線を外してシャモが時計を見ると、
〔多〕「結局草サッカー同好会に残るのは何名なんだ。
しぶしぶうなずくシャモと
〔多〕「他の奴らは全員転部か。根性ねえな。次回からは
〔三〕「あれ、忘れ物」
〔シ〕「この『ページヤ』って書かれたダサいバッグってあの群馬の子のだよな。教室を飛び出した所までは見たが」
〔三〕「あれから一時間近く経ってる。トイレにしちゃ時間が掛かり過ぎ」
〔シ〕「部活替えする気ならカバンは持っていくよな」
〈横浜駅東口にて〉
〔松〕「もう大丈夫です。済みません。ありがとうございました」
横浜駅で松尾と一緒に降りようとする仏像に、松尾はあわてて礼をする。
〔仏〕「いや、俺も最寄りが横浜駅。時間があったらおごるから、ちょっと付き合えよ」
すれ違いざまにまぶしいものを見るような女子の目をことごとくスルーした仏像は、一軒のカフェに入ると奥まった席に松尾を案内した。
〔仏〕「あのさ、『絶対に運動をしたくない』って書いてただろ。本当は『絶対に運動できない訳がある』んだよな」
開口一番、仏像が真剣なまなざしで松尾に問いかけた。
〔松〕「えっと、それは」
松尾は
〔仏〕「部活の奴らは、松尾がDVから逃れて横浜で暮らしてるって思い込んでいる」
〔松〕「どうしてそんな話に?! 全然違います。ただ」
松尾は仏像の言に大きく首を横に振った。
〔仏〕「顔と手まで隠した格好をして来たから、
〔松〕「これ、そんな風に見えたんですか。困ったな。違うんです。えっと」
松尾は自分の言葉を証明するように、アームカバーと花粉眼鏡を外して見せる。
〔仏〕「本当の理由が言いたくなければ言わなくていい。ただ、先に謝っておく。俺は多分、本当の理由を知っている」
〔松〕「
松尾が目を丸くした。
〔仏〕「飛島って誰。いや、『松田松尾 群馬』で検索したんだわ。他の奴らには
仏像の言葉に、松尾は意を決したように顔を上げた。
〔松〕「それならば、どうか誰にも検索結果を伝えないでください。いずれ知れる事だとは思いますが、それまでは」
〔仏〕「分かった。実は中三の時に俺も同じような目に
仏像が自分のスマホを差し出すと、松尾は思わず顔を上げて仏像の目を見つめた。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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