誰かいたよ?

『私のことはベルって呼んでねー』

唯我鈴ゆいがりんだから、ベルにしたのね」

『そうそう! って、天照大御神様にも聞こえるの? 初めまして! 唯我鈴ことベルでーす。よろしくお願いします! あっ、そうだ。私の願いを聞いてくれるなら、このままべアーティと一緒にいたいんだけど……できそう?』

「できるわよ。お願いしておくわ」

 僕と一緒にいたいって思ってくれてるんだ。嬉しい! いつか恩返しできたら、いいなぁ。

『天照大御神様に感謝をー!』

「そんな大仰に言わなくても良いわ」

「うん」

『べアーティにも言われた! もうちょっと気を付けるねー』

「それが良いと思うわ」

 そういえば…ベルさんって呼んでみたら、ダメって言われちゃった。試しにベルさんじゃなくて、ベルちゃんって呼んでみたの。そうしたらね?

『べアーティから、ベルちゃんって言葉が…………尊い。この世に悔いはない、死んでるけど』

 ベルちゃんが砂になって崩れていく様子が、はっきりと想像できちゃった。僕がベルちゃんってまた呼んだら、すぐに元に戻る姿も。

「確かに想像しやすいわね。なぜかしら?」

『それはたぶん、私のキャラが確立してるからだよー』

「そういうことなのね」

「ベルちゃんは特徴的だもんね、色んな意味で」

『含みがあるー! べアーティが悪い子になっちゃったよー。ぐすっ、悲しいよー』

 僕は悪い子じゃないもん。それにしても、セリフが棒読みだよ。演技できない人なんだね、ベルちゃん。

「演技はさせないほうが良いわね」

『そんなに下手だった? 懇親の演技だったんだけどなー』

「演技と言えないほど下手だったわ」

『辛辣だねー。そんなに下手だったんだ』

 ベルちゃんが思っている以上に下手だと思う。そんなに落ち込まなくても、違うことで役に立てるでしょ? 元気出して!

『べアーティに慰められた。嬉しいなー!』

「飛び跳ねてる様子が目に浮かぶわね」

 母さまも浮かんだんだ。僕も同じ光景が目に浮かんだよ! やっぱり、ベルちゃんは分かりやすいんだね。

『元気が満タンになりました』

「今のは棒読みが良い感じに作用したわね」

「機械が喋ってるみたいで、いい感じだね!」

『そう? 演技をするときは、機械の演技をしようかなー』

 機械の演技はないと思うけど……あるのかな? ベルちゃんは機械の演技を見たことあるの?

『演技はないけど、アニメで機械っぽい声は聞いたことあるよー』

「貴方達はこれから違う世界に行くのだから、使うところがないと思うわよ」

『異世界転生ってやつ? ラノベ大好きだったから、嬉しいー!』

「母さまと会えなくなるの?」

「会えなくなるわ。でもね、喋ることはできるわよ」

 ベルちゃんが「電話みたいなことー」って言ってるけど、僕も電話のこと知ってるみたい。ベルちゃんの記憶が僕に流れ込んでるのかなぁ。ベルちゃんと僕は別人だけど、元々は同じ人ってことだもんね。

「ベルと話すとベティーの人格が構成されていくのよね。ベティーの言う通りかもしれないわ」

『じゃあ、こういうこと? 私とべアーティは同じ人格だったけど、壊されたことによって人格が二つになって………私が奥に引っ込んだことで、べアーティという新しい人格が構成された。みたいなー?』

「私と同じことを思っていたのね。本当はサポータースキルを与えようと思っていたのだけれど、貴方にはサポータースキルと同じ権限を与えようかしら。スキルの統合だったり、主人のスキルの使用権が与えられるわ」

『やりまーす! 私にやらせてください! べアーティに教えてあげることができる。役得だー!』

 ベルちゃんは僕だから、外に出ることができないんだよね。ベルちゃんも一人として過ごせるといいんだけど。

「本当に良い子ね」

『ほんとだねー。私にもこんな時代があったのかなー?』

「なかったと思うわよ。貴方には幸せが与えられなかったと、言ったでしょう?」

『そっかー。べアーティと一緒に過ごせたなら、幸せを感じれただろうなー』

 ベルちゃんが嬉しいことを言ってくれてる。でも、過去形なのは嫌だなぁ。これから、一緒に過ごせばいいだけだよね!

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